lost child

[広場]

 クリスの手を引いて、街をうろつくこと半刻あまり。
「よし、広場だ。ここではぐれたんだな?」
「うん……」
 喧騒を辿ってようやく広場まで戻ることが出来たが、広場は相変わらず人でごったがえしている。
 とはいえ、最大の見せ場である英雄と精霊の儀式とやらはすでに終了したらしく、広場に残っているのは、このまま夜のどんちゃん騒ぎまで時間を潰そう、という人間達のようだ。
 すでに酒が入って騒いでいる連中もいたので、それらを慎重に避けて、適当な屋台から聞き込みを開始する。
「おっさん。この子の親を探してるんだけど、心当たりないか?」
 これこれこういう感じの、と細かく説明してやると、屋台の親父はしばし考えて、ああと手を打った。
「そういやさっき、子供がいなくなったって探してる夫婦がいたっけな。子供の名前はなんつったか……クリフとか、なんとか」
「クリスだよ! それ、ぼくのおとうさんとおかあさんだ!」
 俄然元気になって騒ぐクリス。彼らの身体的特徴を聞いてみても、彼から聞かされていたものとほぼ合致する。どうやら間違いなさそうだ。
「で、その夫婦はどこへ行った?」
「ああ、この辺りの屋台一軒一軒を回ってたが、しばらくしてあっちの方に歩いてったぜ。警備隊の屯所に行ったか、時計台の方へいったか、どっちかだろうな」
 それだけ聞ければ十分だ。ありがとよ、と踵を返しかけて、クリスの視線が売り物――色とりどりの飴――に注がれていることに気づく。
 今にもよだれを垂らしそうなその様子に、やれやれと肩をすくめた。買ってやる義理などないが、このまま立ち去るのは難しそうだ。
「その飴を一つ頼む」
 小袋から硬貨をつまみ出して手渡すと、屋台の親父はにかっと笑って一番大きな棒つきの飴を二本、差し出してきた。
「一本はおまけだ」
 わーい、と歓声を上げて飴を受け取るクリス。もう一本を強引に握らされて、渋々口に運ぶ。
 赤い飴は、苺の味がした。
「ほら、さっさと行くぞ!」
 照れくささを隠すように、ぶっきらぼうに言って歩き出す。
「どっちへ行くの?」
「そうだな……」

時計台へ向かう 警備隊の屯所へ向かう