光と闇の攻防戦


 朝。窓の外から差し込む陽光と、小鳥のさえずり。
 穏やかな朝の光景を台無しにするような、甲高い声
―――ビィィィィィィィィィッ!!―――

 タイトル

ラウル「だから!何度言ったら分かるんだ!」
 頭から湯気が出そうな勢いで怒鳴りつけるラウル。
 その前には、寝台の上にぺたんと座り込み、拗ねているルフィーリ。
ラウル「お前の寝床はそっちだろうが!」
    「なんでいっつも俺のところに来るんだよ?!」
ルフィーリ「(拗ねたような目で、ラウルを見上げている)」
 ラウル、尚も叱りつけようとして、ふと窓の外から聞こえてきた鐘の音に気づく。
 途端に勢いを取り戻すルフィーリ。
ルフィーリ「らうっ!ごはんっ!」
ラウル「ったく……」
 頭を抱えるラウル。

 昼。村の食堂兼酒場『見果てぬ希望亭』
 テーブルに肘をついているラウル。
 店の奥の方から響いてくる子供達の歓声。
 空いた皿を下げに来たレオーナが、くすくす笑いながらラウルをからかう。
レオーナ「……それで、今日も寝込みを襲われたって訳ね」
 駆け寄ってきたロイ(6歳)をひょい、と抱き上げるレオーナ。
 一緒に走ってきたルフィーリが、それを羨ましそうに見つめている。
ラウル「(憮然と)誤解を生むような言い方はやめてくれよ(立ち上がる)」
 チャンス、とばかりに抱きつこうとするルフィーリ。
 しかしラウルはそれをあっさりかわし、懐から硬貨を数枚テーブルに置く。
ラウル「ごちそうさん。ほら行くぞチビ!」
ルフィーリ「らうぅ(不満げ)」
 さっさと歩き出すラウルを追いかけて、走り出すルフィーリ。

 夜。
 一日中遊びまわって疲れきったルフィーリは、寝台ですやすやと眠っている。
 夜のお祈りを終えて寝室にやってきたラウル。
 燭台を枕もとの机において、ふとルフィーリの寝顔を覗き込む。
ルフィーリ「(寝言)らうぅ……」
ラウル「ったく、幸せそうな顔しやがって」
 この、と頬をつまむが、気づくことなく眠り続けるルフィーリ。
 案の定ずれている上掛けを直してやり、自らも寝台に滑り込む。
ラウル(明日こそは、平穏な朝を迎えたい……)
 蝋燭の炎を吹き消すと、真っ暗になる部屋。
 月明かりに照らされたルフィーリはの寝顔は、どこか悪巧みをしているように見える。

 夜明け。ようやく空が白み出した頃。
 遥か地平線の彼方から姿を現す太陽。
 それと同時に、ぱちりと目を覚ますルフィーリ。
 ごしごしと目をこすり、辺りを見回す。
 まだ薄暗い部屋の中、寝台の上で寝息を立てているラウルの横顔。
 ぴょん、と起き上がり、寝台を抜け出してラウルのもとに向かうルフィーリ。
 そーっと毛布の端をめくり、ラウルにぴとっ、とくっつく。
ラウル「んー……」
 無意識に身じろぎし、すり寄ってきたルフィーリを抱き寄せるラウル。
 背中をぽんぽんと叩かれて、嬉しそうにぎゅーっと抱きつく少女。
 ルフィーリの心象風景。
 闇の中に佇むラウル。その胸から迸る光は、卵の輪郭をしている。
 それをそっと両腕で守るようにして、目を伏せている闇の神官。
 背後に浮かぶ記憶の断片。
 卵を発見して目を丸くしているラウル。商人に激怒しているラウル。
 そして照れくさそうに笑っているラウル―――。
ルフィーリのモノローグ
 (あったかい) (あんしん) (なつかしい)
 (ひかり と やみ) (あいはんするもの) (おんなじ、もの)
 (るふぃーり らう) (ずーっと いっしょ)
 すっかり安心しきった顔で、ラウルの腕の中で二度寝を始める少女。

 やがて窓から差し込む冬の日差し。
 眩しさに目を開けたラウルは、次の瞬間目を見開く。
 布団をはみ出し、あまつさえラウルの上で大の字になって寝ている少女。
ラウル「―――!!」
 声にならない絶叫が小屋に響き渡る。

 怒鳴り声が響く小屋。(台詞はなし)
 のどかな丘の風景。

 Never End...?(もしくは、"一コマ目に戻る"・笑)