それは一年に一度の運試し。
金貨入りを当てた者には幸運が訪れるという伝統のパイ菓子。それを均等に切り分けるという、極めて責任重大な役目を突如押し付けられた若き神官は、小刀を手にパイを睨む。
「らうー、はやくぅ」
今にも涎を垂らさん勢いで急かしてくる養い子に「分かった分かった」と返事をし、ええいままよ、と小刀を振り下ろせば、刃先から伝わる鈍い手ごたえ。
「あっ」
「あー!!」
絶叫を聞きつけて厨房から顔を出した女将は、揃いも揃ってこの世の終わりを見たような顔をしている子供達をぐるりと見渡して、あらあらと片目を瞑ってみせた。
「つまり、今年の王様はラウルさんってことね」
「えっいやそんな」
「そんなのありかよー!」