――正直なところ、ネタが尽きたんだ。
連れて行かれた酒場で、養父はあっけらかんと笑う。
「しかしまあ、たまにはこんなのもいいかと思ってな」
「そんなこと言って、自分が飲みたいだけだろ」
呆れ顔で答えつつ、通りがかった看板娘を捕まえて注文をする。
「ツマミを適当に、あと――」
「例の酒を頼むよ」
「かしこまりました~!」
訳知り顔で引っ込んだ看板娘は、すぐに太めの瓶を抱えて戻ってきた。
「ジェノア産の二十五年物? こんな蒸留酒よくあったな」
「ああ、随分前から探してもらっていたんだ」
古めかしい瓶をそっと取り上げ、慎重に注ぐ。
「いい酒だからな。味わって飲むんだぞ」
「分かってら」
初めて差し向かいで飲んだ酒は、喉に沁みた。