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この街では いつだって死と隣り合わせ
 死神と背中合わせに生きてるようなもんだ

 強いものだけが生き残る それがこの街の掟
 そうさ 仕方がないんだ
 今年の冬が いつになく厳しいことも
 たちの悪い流行病が 街中に広がっていることも
 運の悪いあいつが 病で死に掛けていることも

 何も、出来ないことも

 そう、みんな仕方ないことなんだ


『そんな顔には見えないな』

 いつの間にか 背中合わせに座っていたその男は
 無力なこの手を笑うことなく ただそうとだけ呟いた

『悔しいなら、生きろ』



『生きて――その手で掴み取れ』

まるで捨て台詞のように 暗闇に言葉を残して
黒衣を翻して去っていく そいつの横顔が
どこか楽しそうに見えたのは 気のせいか


静寂の夜はやがて明け
白い朝がやってきて

「おはよう、兄貴」

そんな声が 聞こえた
確かに、聞こえた

「……馬鹿野郎……!!」
「な、なんだよ兄貴、なんで怒るんだよ!?」


 こんな街にも 明日が来るのなら
こんな手でも 未来は掴めるかもしれない


Fin,


 八周年記念企画の一環として行った「第二回コンビ投票」、その第一位に輝いた「ラウル&ユーク神」のコンビを題材にしたSSをお届けしました〜。
 「イラストつきSS」と銘打ったがために、SSはすぐ書き上がったもののイラストがなかなか完成せずに、えらく時間がかかってしまって申し訳ないm(__)m

 最初に思いついたのは「背中合わせの二人」「ちっこいラウルとでっかいユーク神」というコンセプトでした。そこから膨らませたらこんなお話に。
 なお、神々は姿を自在に変えられます。そして結構しょっちゅう地上に降りてきてます(笑) ラウルはこの出来事を夢だと思っているみたいですが(笑) これがラウルとユーク神の最初の出会いだったりします。正式に声をかけたのではなく、たまたま通りかかっただけなので(笑) この時点では神官としての力は得ていないわけですが。

 ちなみに、流行病にかかって生死の境を彷徨っていたのは外伝2「Present」にちらっと出てきたゼフ君だったりします(^_^;)
2007.08.22
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