[一言フォーム] [series top] [HOME]

手向けの花

 別れはいつも、唐突なものだ。
 戦いの中に身を置く者なら尚更、その時は突然やってくる。
 準備も覚悟も出来ないまま、ぷっつりと途切れる人生。
 しかも決まって、いい奴ほどあっさりと、呆気なく逝くときた。

 だから、あの戦いを生き延びた時、二人で誓った。
 俺達は、偏屈で、口やかましくて、しつこくて、周囲からくそじじいと罵られるような年寄りになってやろうと。
 惜しまれなくていいから、どこまでもしぶとく、最後まであがいてやろうと。

 それなのになんだ、お前は。
 人が出かけている間に、あっさりと逝きおって。
 最後に会った時には、傍迷惑なくらいに元気だったくせに。

 それでも方向音痴なお前のことだ、きっとその辺でまだ彷徨っているだろうと思ったのに、こんな時だけ迷わずに逝くなんて、どういうつもりだ?
 まったく、最期までひねくれた奴だな、お前は。

 そっちがそういうつもりなら、覚えていろ。
 必ず文句をつけに行ってやるからな。

 だから別れの言葉の代わりに、こう言おう。

「首を洗って待っていろ」


グラヌド=ジェダ=エラキス
59.6.8〜130.3.16
精霊に愛されし男、ここに眠る

『どんなに迷おうとも 道は必ず明日に通じる』


-完-



 戦友の死に手向けたゲルク老の言葉。返答があるとすれば「待てと言われて待つヤツはいない」でしょうか(^^ゞ
 「お前が死んで寂しい」とは口が裂けても言えない偏屈爺様は、何かにつけてはぶちぶち文句をつけていた模様。
 墓石に刻まれた言葉は、旅の最中にグランがよく口にしていた言葉。天性の方向音痴だったひねくれモノの精霊使いグランは、道に迷ってゲルクからなじられるたびに、しれっとこんな言葉を返していたみたいです(^^ゞ

 先に逝った仲間達の分まで、ゲルク様には長生きしていただきたいものです。

 ちなみに、タイトルになっている(くせに本文には全く出てこない)手向けの花はマーガレット。ゲルク老はその辺から適当に摘んできたようですが、花言葉は「真実の友情」だったりします(^^ゞ
[一言フォーム] [series top] [HOME]