[一言フォーム] [series top] [HOME]

序章:社長の溜息

新世暦140年 四の月二十日 エルドナ・《たんぽぽ新聞社》社長室(兼倉庫)

 今日も天気だ。煙草が美味い。
 おっと、そんなことを言っている場合ではないのだ。えへん。
 新世暦135年に創刊した我らが「たんぽぽ新聞」も、来月で五周年という大きな節目を迎えるわけである。うむ。
 これまで、ローラ国内におけるあらゆる出来事や流行をいち早く発信してきた「たんぽぽ新聞」だが、ここしばらくは大きな事件もなく、記者達は特種を追って各地を駆け回っている。
 五周年記念ということで、今までにない特集記事など組みたいところだが、何かいいネタはないものだろうか。
 このままでは第一号で特集しようとして全員から駄目出しを食らった「社長のオススメ! 卵料理百選」を載せることにもなりかねない。いや、載せてくれるならそれでもいいんだけどね。ほんとに美味いから。
 ごほん、話がそれてしまったな。
 これまでに好評だった特集といえば、「ティーザのチーズ祭」や「エルドナの七不思議」「究極のりんご痩身法」といったもので、私が掲げる『人々に世界の真実を』という信念からはかけ離れた内容のものばかりだ。
 逆に、社運を賭けて密着取材した「執念の『王室御用達』~宝石商ドルセン~」などは、記者が取材中に怪我を負ったり、当の宝石商から圧力をかけられたりと苦労した割には全然売れなかった。
 その次の号から連載を開始した冒険小説「ローラの大冒険」だけは、毎日のように感想の手紙が来るほどに好評を博しているのだが、我らが出しているのはあくまで新聞であって、小説雑誌ではない。連載小説ばかりが持てはやされると、なんというか……悔しいじゃないか。
 ……苦し紛れに書いてみただけだったんだけどなあ、まさかあんなに人気出るなんてなあ……。

 あーっと、ごほん。

 とにかく、記者諸君!  創刊五周年に相応しいトクダネを掴んできてくれたまえ!!

 このままじゃ読者に見放されちゃうよ!! ふう……。



たんぽぽ新聞社 社員名簿

リオン=パップス(草原人・男・25歳・ヒゲ)

 たんぽぽ新聞社を立ち上げた第一人者。普段は社長室でヒゲの手入れに余念がない。
 紳士を気取っているが、見た目が子供(でもヒゲ)なので決まらない。
 もったいぶった言動をするが、地は陽気なあんちゃんなのですぐにボロが出る。
 昼行灯に見られているが人を見る目は確か(?)で、現在の社員も全て彼が見つけ出してきた。
 実は冒険小説「ローラの大冒険」を書いているのは彼なのだが、世間には公表していない。そちらの筆名は「ピーター=フロックス」。

[一言フォーム] [series top] [HOME]