ああ、やっと見つけた。もう、探しましたよ。屋上で昼寝をするのはやめてくださいとあれほど――。
いえ、お説教をしにきたわけじゃなくてですね。
最新号、かなり好評ですよ。今日も伝令ギルドの女の子に「詳しいこと分かった?」なんて聞かれちゃいました。えへ。
そうそう、西の一帯を担当している配達員から、詳しい話が聞けたんですよ。
ええ、ベンの情報は確かでした。あの村に先日赴任してきた神官さんが、謎の卵を拾ったって話で。はい。
その子は実物を見たわけじゃないそうなんですけど、伝え聞いた話では、人間の大人がやっと抱えられるくらいの大きさだそうです。ベンがいつものように誇張したのか、話が人づてに大きくなりすぎているのか分かりませんが、すぐに訂正記事を出さないと。
……あ、社長。今、目玉焼きにしたら何人分かな、とか考えてたでしょう!?
駄目ですよ、食べようとしちゃ! その卵はちゃんと生きてるんだそうですからね。
ベンのやつ、周辺から固めるのが肝心だとか言って、あちこちふらふらしてるみたいなんで、もうネリネに突撃取材させた方がいいと思うんですが。エスト行きの乗合馬車がちょうど、明日の朝に出ますしね。
――はい、分かりました。それじゃネリネに伝えておきます。きっと喜ぶだろうなあ。え? なんでかって?
なんでも、その不思議な卵を拾って育てている神官さんって、結構な美男子だそうで。ベンが情報を渋ったわけですよ。会ったこともない人間に敵愾心を燃やしてどうするんでしょう、彼は。
噂通りの美男子だったら、その神官さんで特集記事を組んでもいいかもしれませんね。
それじゃ社長、次号も引き続き「謎の卵」の記事でいいとして、あとは『ローラの大冒険』の続き、よろしくお願いしますよ? 書き溜めてた分、もうほとんどありませんからね。挿絵師も早く原稿をくれと、矢のような催促をしてきてますよ。
あー、逃げないで下さいっ! 社長! もう、リナリーに言いつけますよ!!