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2.新たな情報です

新世暦140年 五の月十ニ日 エルドナ・《たんぽぽ新聞社》屋上

 ああ、やっと見つけた。もう、探しましたよ。屋上で昼寝をするのはやめてくださいとあれほど――。
 いえ、お説教をしにきたわけじゃなくてですね。
 最新号、かなり好評ですよ。今日も伝令ギルドの女の子に「詳しいこと分かった?」なんて聞かれちゃいました。えへ。
 そうそう、西の一帯を担当している配達員から、詳しい話が聞けたんですよ。
 ええ、ベンの情報は確かでした。あの村に先日赴任してきた神官さんが、謎の卵を拾ったって話で。はい。
 その子は実物を見たわけじゃないそうなんですけど、伝え聞いた話では、人間の大人がやっと抱えられるくらいの大きさだそうです。ベンがいつものように誇張したのか、話が人づてに大きくなりすぎているのか分かりませんが、すぐに訂正記事を出さないと。
 ……あ、社長。今、目玉焼きにしたら何人分かな、とか考えてたでしょう!?
 駄目ですよ、食べようとしちゃ! その卵はちゃんと生きてるんだそうですからね。

 ベンのやつ、周辺から固めるのが肝心だとか言って、あちこちふらふらしてるみたいなんで、もうネリネに突撃取材させた方がいいと思うんですが。エスト行きの乗合馬車がちょうど、明日の朝に出ますしね。
 ――はい、分かりました。それじゃネリネに伝えておきます。きっと喜ぶだろうなあ。え? なんでかって?
 なんでも、その不思議な卵を拾って育てている神官さんって、結構な美男子だそうで。ベンが情報を渋ったわけですよ。会ったこともない人間に敵愾心を燃やしてどうするんでしょう、彼は。
 噂通りの美男子だったら、その神官さんで特集記事を組んでもいいかもしれませんね。

 それじゃ社長、次号も引き続き「謎の卵」の記事でいいとして、あとは『ローラの大冒険』の続き、よろしくお願いしますよ? 書き溜めてた分、もうほとんどありませんからね。挿絵師も早く原稿をくれと、矢のような催促をしてきてますよ。
 あー、逃げないで下さいっ! 社長! もう、リナリーに言いつけますよ!!


たんぽぽ新聞社 社員名簿

セージ=ビスナー(草原人・男・23歳・のっぽ)

 草原人には珍しくひょろ長い(あくまで草原人にしてはの話ではあるが)。
 一見して気弱で軟弱な青年だが、持ち前の粘り強さを生かして記事を取りまとめる敏腕編集。新聞がきちんと刊行されているのはひとえに彼のおかげ。

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