ようやく辿り着きました、ローラ国最西端の村エストです。
『最果ての村』『夢追い人の墓場』なとど称されるこの村にて、謎の卵が見つかったとの情報を入手し、突撃取材するべくやってきました!!
卵を保護しているのは、先日この村にやってきた神官さんということですが、ああ、ちょうど村の方がいらっしゃったのでお話を聞いてみましょう。
こんにちは! 私、たんぽぽ新聞のネリネ=カポックと申します!
「はあ、こんにちは。こんな何もないところまで、よう来なさったねえ。お茶でも飲むかい?」
ありがとうございます、いただきますっ!
……じゃなくて!
あのですね、こちらで謎の卵が見つかったという話を聞いて、是非取材させていただきたく――。
「卵? あー、あれね、あの、エストの」
はい、そうです! エストの! って……エストの?
「お嬢ちゃん、入り口の看板を見なかったかね? ここはフェージャ。エストは隣村だべ」
えええええ!? だって、途中まで乗せてくださった荷馬車のおじさんに、ちゃんと道を確かめたはずなのに!!
「あー、途中の分かれ道で間違ったんだなあ、きっと」
そんなあ!! あの、ここからエストまでってどのくらいかかります?
「そーさなー、お嬢ちゃんの足なら二刻ちょいってとこか。今からじゃ日が暮れちまうだよ。それに、今エストに行ったところで無駄足だあ」
なな、なんでですかっ!?
「卵拾って育ててる、あの神官さんなあ、エルドナに用事があるって出かけてったんだわ。三日くらい前だったかなあ」
エルドナー!? 私、エルドナから来たんですようっ。
「ありゃー……そいつは、間が悪かっただなあ」
わああん、どうしよう……。あ、でもでも、その卵はエストにあるんですよね?
「いやあ、それがなあ。置いてくと不安だからってわざわざ持ってったらしいんだわ。まー確かに、留守の間に怪物でも孵ったらたまらんしなあ、その方が村人も安心だろうて」
あの、それで、いつ頃お帰りになるんでしょうか??
「やー、おらも詳しいことは聞いてないだども、少なくともあと三日四日は帰ってこんだろうなあ」
そんなあ……もう締め切りまで間がないし、今から本社に手紙を出しても間に合わないだろうし……。ふええええん。
「泣くでねえよ、お嬢ちゃん。人生っつーのは思うようにはいかないもんだあ。ま、うちで茶でも飲んで、ゆっくりしていきなせえ」
は、はいい。ありがとうございますう。
「しかし、新聞記者さんが取材に来るなんてよお、あの卵も有名になったもんだなあ」
いえ、我々も噂話程度の情報しか得ていませんので、こうしてきちんと取材させていただこうと思ったんですけど……。
「ま、今度は道を間違えないようにするこったなあ」
はい、頑張りますう……。