嘆き苦しむ人々の前に颯爽と現れて敵を討つ、一騎当千の
剣を振るえば怪物の群れを薙ぎ倒し、呪文を唱えれば大地をも切り裂く。
人々は勇者の活躍に熱狂し、その功績を褒め称えるのだ。
しかし、勇者の名を知る者はいない。
孤高の勇者は今日も一人で世界を救い、そして去っていく。
吟遊詩人は歌うだろう。
『こうして世界は救われたのです。めでたし、めでたし』
勇者――それは神々によって造られた『最終兵器』。
その強大すぎる力は脅威になりかねないと、平時においては封印されてしまうから。
故に、今日も勇者は眠っている。
次なる戦いを夢見て、眠っている――