読みかけの文庫本を手に取った拍子に、挟んでいた栞代わりの葉書がはらり、と床に落ちた。
その辺にあったものを適当に挟んだだけだ。どうせダイレクトメールの類だろう、と思いつつ拾い上げれば、目に飛び込んできたのは「銀の三日月サーカス団」の文字。
貴方を夢の世界へお連れします――
冬の星座がシャラシャラと鳴り響く夜、三日月の真下でお待ちしております
書かれているのはそんな文章と、ラメインクで捺された銀の三日月だけ。
具体的な日時も、開催場所さえも書かれていない、そんな招待状。
高鳴る胸を押え、厚手の上着を羽織って外に出る。
折しも今日は星々が冴え渡り、三日月が輝く夜だ。
散歩がてら、メルヒェンを探しに行ってみようか。