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メルヒェンを探しに
 読みかけの文庫本を手に取った拍子に、挟んでいた栞代わりの葉書がはらり、と床に落ちた。
 その辺にあったものを適当に挟んだだけだ。どうせダイレクトメールの類だろう、と思いつつ拾い上げれば、目に飛び込んできたのは「銀の三日月サーカス団」の文字。

 貴方を夢の世界へお連れします――
 冬の星座がシャラシャラと鳴り響く夜、三日月の真下でお待ちしております

 書かれているのはそんな文章と、ラメインクで捺された銀の三日月だけ。
 具体的な日時も、開催場所さえも書かれていない、そんな招待状。
 高鳴る胸を押え、厚手の上着を羽織って外に出る。
 
 折しも今日は星々が冴え渡り、三日月が輝く夜だ。
 散歩がてら、メルヒェンを探しに行ってみようか。
Novelber 2020」 11 栞


 twitter上で行われていた「novelber」という企画に参加させていただいた作品。テーマは「栞」。
 ちょうど良い分量だったので、整えて300字の物語にしました。
 その辺にある紙を栞代わりに使うのは、私の悪い癖です…。

(初出:Novelber 2020/2020.11.17)
2021.04.23



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