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時雨
「ときさめ?」
「外れだ」
 容赦ない同級生の言葉に、ちぇっと舌を打つ。
「はるさめ、あきさめと来たら、ときさめじゃないのかよー」
「その理屈だと、梅雨は『うめさめ』にならないか」
 プリントを前にうんうん唸る羽目になっているのは、漢字のテスト勉強ではなくて季語の復習だったりする。
「しぐれ、と読むんだ」
 難なく正解を口にした同級生は、不意に口元を歪めると、改まった口調で続けた。
「――知ってるか菊池。実は某人気少年漫画に、それぞれ季語を名前に持つ敵方の四天王がいてだな。繰り出す技名もきちんと五七五になってるんだ」
「えっまじ、なにそれカッコイイ……って、またオレを引っかける気だろー! もう、その手には乗らないんだからな!」


『四天王が一、この時雨サマの攻撃を受けてみよ! 必殺! 『暗闇に魂穿つ小夜時雨(ダークネス・デス・レイン)』!』

「本当にあった」
「全三十五巻だ。貸そうか」
「うん」
Novelber 2019」 11 時雨


 twitter上で行われていた「novelber」という企画に参加させていただいた作品。テーマは「時雨」。
 いつもテスト前に唸ってる菊池君、勉強嫌いではないんだけど、いかんせん集中力に欠くようで。
 「時雨」って見た瞬間に、漫画「幽遊白書」にそういう名前のキャラいたなーって思ったら、もうこういう方向の話しか思いつかなかった……。(※「幽遊白書」の時雨は四天王じゃないし、こういう攻撃しませんので念のため)(飛影に邪眼の手術した妖怪です)

(初出:Novelber 2019/2019.11.11)
2020.01.22



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