「外れだ」
容赦ない同級生の言葉に、ちぇっと舌を打つ。
「はるさめ、あきさめと来たら、ときさめじゃないのかよー」
「その理屈だと、梅雨は『うめさめ』にならないか」
プリントを前にうんうん唸る羽目になっているのは、漢字のテスト勉強ではなくて季語の復習だったりする。
「しぐれ、と読むんだ」
難なく正解を口にした同級生は、不意に口元を歪めると、改まった口調で続けた。
「――知ってるか菊池。実は某人気少年漫画に、それぞれ季語を名前に持つ敵方の四天王がいてだな。繰り出す技名もきちんと五七五になってるんだ」
「えっまじ、なにそれカッコイイ……って、またオレを引っかける気だろー! もう、その手には乗らないんだからな!」
『四天王が一、この時雨サマの攻撃を受けてみよ! 必殺! 『
「本当にあった」
「全三十五巻だ。貸そうか」
「うん」