そこは、どこにでもある場所

例えば 船乗りが集う港町の路地裏
もしくは 鄙びた村の片隅
あるいは ビルの谷間にぽつんと残された、そこは小さな
―――とても小さな店

看板には光る星―――漆黒の闇にあってなお、煌々と光り輝く魔法の光
刻まれた言葉は不可思議な形―――誰もが読めるのに 誰も知らない文字の羅列

古びた扉の向こうから聞こえてくる 賑やかな声
躊躇いがちに扉をくぐれば、懐かしい声が響く

「いらっしゃいませ!」

数々の旅人を受け入れてきた、木造の古びた建物
きしむ床を踏みしめて、とめどない話の輪に混じる
ここでは、誰もが常連客
世界も、次元も、何もかもを飛び越えて
笑顔を交わし合う人々と、それを見つめる店主の微笑み

「どうぞごゆっくり」

ここは時間と空間の狭間
過去と未来 夢と現実が入り混じるところ
そこは、旅人達の集う場所
そして、再び歩き出す場所

「いつでもいらしてくださいね」

店主の笑顔に見送られ 見果てぬ夢へと今日も旅立つ
振り返ればいつでもそこに 揺れる看板と、輝く星
変わり続ける世界を照らす 仄かな光
その名は―――


星 明 か り 亭