[TOP] [HOME]

秋の風物詩
 帰宅すると、部屋の前にどでかい段ボール箱が置かれていた。
「今朝、ご実家から届きましたよ」
 通りがかった文さんの言葉に、もうそんな時期かと頭を抱える。
 この時期、上京組による『実家から送られてきた果物の押し付け合い』は、もはや風物詩だ。
 退寮して配るあてもないから不要だと言ったのに、それでも送ってくるのが親心というやつか。
「りんごですか? 香澄さんの大好物ですわ」
「でも、この量ですよ」
 段ボール一箱分の果物というのは、意外と消費が難しい。
「他の皆さんも協力してくださるでしょうし、それでも余りそうなら、ジャムやパイにするのも良いですね」
 文さんの提案に、ほっと胸を撫で下ろす。
 今年は腐らせたりせずに済みそうだ。
Twitter300字SS」 第六十二回「余り」
 いかんせん季節外れですが(^^ゞ 秋の風物詩と言えば「果物交換」です……。日持ちしない場合がほとんどなので、自炊をしない上京組にとっては恐怖以外の何物でもない……。
 学生時代はよく梨だのりんごだのみかんだのをもらってました。
 うちからは柿をおすそ分けしてましたが、配り切れずに傷んでしまい、涙を呑んで破棄したことも度々……。
 配る(交換する)こと前提であの量を入れているのか、それとも単に「段ボール一箱分が最小ロット」なだけか……怖くて聞けません。
2020.03.07

[TOP] [HOME]

© 2020 seeds/小田島静流