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錬金術師の弟子
 兎にも角にも、彼女はそそっかしくて、とことん不器用だった。
 実験機材を壊すのは日常茶飯事。彼女が触れただけで扉は外れ、窓ガラスは枠ごと地に落ちる。
 工房内を歩くだけで破壊音と悲鳴を量産する、別名『破壊の錬金術師』。そんな彼女をなぜ弟子に取ったのかと問われて、先生はいつも小首を傾げつつ、こう答えていた。
「彼女には物作りの才能がある。それは間違いないのよ」
 そう、確かに彼女には才能があった。
『新進気鋭の空想小説作家、待望の新作発表!』
 新聞広告を広げ、得意げに頷く先生。
「あの子の才能は『物語を紡ぐ』ことだったわけね」
「物作りと物語じゃ随分違いますけどね」

 『世界そのもの』を生み出す。それも錬金術の在り方か。

 こちらは世界樹の街・四番街にある、とある錬金術工房のお話。
 以前、Twitter上で「いいねしてくれた人を自分の創作世界のキャラにするとしたら」みたいなタグがあって、そこで四番街に錬金術工房を構えるキャラを作らせていただいたのですが、そこから派生して思いついたSSです。
 名前が出て来ませんでしたが、『先生』と呼ばれているのは錬金術師のイーリス。魔術と錬金術と科学技術をあれこれ融合させて、「これどう考えてもロボットだろ!」みたいな造形のゴーレムとか、メカメカしい物をあれこれ作ってます。「材料調達のため」と称した放浪癖があり、あちこちで見込みのありそうな子供をスカウトしては弟子にしています。(このお話の語り手であり、最後に容赦ないツッコミを入れているのは一番弟子です)

 ちなみに晴れて人気作家となった「末弟子」ですが、そのまま工房で働き続けているようで、未だに工房からは破壊音と悲鳴が絶えないようです(笑)
2018.02.17


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