「さあさ、売りたい喧嘩、買いたい喧嘩、なんでもござれ! このザムザ様がアンタの代わりに受けてやる!」
威勢の良い口上は、街で噂の喧嘩屋だ。
不敗のザムザと名高い若き喧嘩屋は、金さえ詰めば魔王にだって喧嘩を売る、と評判だ。
悪名高き商人や代官を叩きのめすこともあれば、決闘の代理人を引き受けることもある。報酬次第では怪物退治や用心棒なども請け負ってくれる。
そんな彼が唯一買わない喧嘩、それが──。
「また他の女に粉かけたわね、この浮気者! ザムザさん、こらしめてやって!」
「お、おまえこそ服屋の店員に色目使ってんじゃねえか! 助けてくれよう、ザムザ」
「だから、痴話喧嘩は対象外だっつってんだろうが! 家でやれ、家で!」