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覚めない夢
 目を開ければ、いつもの天井。
 白く揺れるカーテンの向こうには、緑の丘と青い海。
 世界はいつだって活気に満ち溢れているのに、私は寝台から起き上がることすら出来なくて。
 ああ、それならせめて。
 夢の中では、自由に走り回れたらいいのに。
 どんなに駆けても苦しくなくて、どこまで遠出しても怒られたりしない。
 丘を越え、街を越え。港を越え、海さえも越えて。
 世界の果てまでだって、きっと行けるだろう――。

「どうしたんだよ、思い出し笑いなんかして」
「いえ、小さい頃に見ていた夢を思い出したのです」

 この街は、世界の果てにあって。
 誰とでも話せて、どこまでも行けて。
 毎日が幸せで。
 まるで覚めない夢の中にいるようだと、時々思うのです。
Twitter300字ss」 第五十八回「夢」
 お人形ちゃんこと『看板娘』リリル・マリルの夢と、そして現在。
 紆余曲折の末に辿り着いたのは、様々な種族が世界を越えて集う不思議な街。
 それはまるで、たくさんの奇跡が紡ぎ出す、夢の街。
 覚めない夢がないように、いつかはこの奇跡も終わるのかと、そんな不安も抱きつつ――。
 優しい夢に包まれて、今日も彼女は笑うのです。 
2019.10.05


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