夕食後、紅茶に添えられた小さなパイに、おや、と目を細める店主。
「どうしたの、これ」
「パン屋さんの新作だそうです」
「へえ、美味しそうだね」
意外にも甘いものに目がない店主は、嬉々としてパイに齧りつき――。
「ユージーン! 体が光っているのです」
「あれ、ほんとだ」
ほのかな燐光を纏い、のほほんと笑う店主。
「あはは、面白いねえ」
「おっさん! 『面白い』の一言で済ませるな!」
思わず突っ込むオルトの口にパイの欠片を放り込み、やがて光り出す彼を見て、満足げに微笑む。
「今年、うちで配るのはこれにしようよ」
「……大丈夫でしょうか」
そして《星祭》前夜、街のあちこちで光る『悪戯妖精』が目撃され、人々の度肝を抜くこととなる。