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百年の刹那・幻の花
 百年に一度、世界樹が薄紅色に染まる。
 夜明けと共に咲き、小一時間で散ってしまう『幻の花』。
『ああ、懐かしい景色だ。故郷を思い出す』
 かつてこの光景を共に眺めた異郷の剣士は、そう呟いて涙を零した。
 彼が教えてくれた花の名は、もう思い出せない。


 百年に一度。それは長命な彼にとっても待ち遠しいものなのだろう。
 その瞬間を共に過ごそうと声を掛けてくれたのはきっと――『次』がないことを知っているからだ。
 翼人の寿命は短い。道が交わるのは今、この一瞬だけ。


「お茶が入りましたよ」
 涼やかな声が、二人を現実(いま)へと引き戻す。
「よいお花見日和ですね」
 にっこりと笑う看板娘に、男達は顔を見合わせて頷いた。
「うん、本当に」
「そうだな」

 こちらは第5回 Text-Revolutions内有志企画「300字SSポストカードラリー」参加作品。
 四回目のお題は、開催時期にちなんで「桜」でした。
 エルフの中でも長命種のユージーンと、短命な翼人のオルト。二人の時間がこうして交差していることこそが奇跡。
 だからこそ、彼らは百年の刹那を、共に見上げるのでしょう。

 表面おまけも合わせてお楽しみくださいm(__)m
2017.11.15


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