ついてない。本当についてない。
倉庫にあった「変化の壺」を覗いてしまったのが運の尽き。気づけば魔法の杖になっていた。
解除条件は「愛する者からの口づけ」――残念ながら、僕に恋人はいない。
絶望と共に眠り続けること幾星霜。ある日突然、倉庫の扉が開いた。
「これは宝の山だな。見ろ、この杖なんか新品同様だ。これは掘り出し物だぞ!」
うわあ頬ずりするなよ髭が当たる! ああっ、やめろそれ以上は――!
ぼわん
「嘘だろ……」
めでたく「(魔具を)愛する者からの(偶然の)口づけ」で人の姿に戻れたわけだが、やはりこれでは不十分だったらしく。
昼間は人、夜は杖という中途半端な変化を繰り返す羽目になった僕は、やはり相当についてない。