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運の尽き
 ついてない。本当についてない。
 倉庫にあった「変化の壺」を覗いてしまったのが運の尽き。気づけば魔法の杖になっていた。
 解除条件は「愛する者からの口づけ」――残念ながら、僕に恋人はいない。
 絶望と共に眠り続けること幾星霜。ある日突然、倉庫の扉が開いた。
「これは宝の山だな。見ろ、この杖なんか新品同様だ。これは掘り出し物だぞ!」
 うわあ頬ずりするなよ髭が当たる! ああっ、やめろそれ以上は――!

 ぼわん

「嘘だろ……」

 めでたく「(魔具を)愛する者からの(偶然の)口づけ」で人の姿に戻れたわけだが、やはりこれでは不十分だったらしく。
 昼間は人、夜は杖という中途半端な変化を繰り返す羽目になった僕は、やはり相当についてない。
Twitter300字SS」 第七十二回「運」
 以前書いた「ライトスタッフ」の前日譚というか、対となるお話。
 お題の「運」を眺めていたら「運の尽き」が出てきてしまって……。そういや「ついてない」とぼやく話を書いたことがあったな、と思って練ったらこんなお話に。

 ちなみに「変化の壺」は……某不思議のダンジョンに出てくるやつみたいな……。
 あれは「入れる」と変化しますが、これは「覗く」だけで変化するヤバい壺だったようです。
 ちなみに倉庫には「変化の壺」もまだ残っていたはずなので、第二、第三の犠牲者が出ていないことを祈ります……。
2021.02.06


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