窓の外に広がるのは、どこまでも続く空。
その名の通り『世界の果て』、天高く聳える塔から見る景色はさぞ絶景だろうと言われるが、実際のところはひたすらに『空』。それだけだ。
朝も夜もない、ついでに雲一つない空。
永遠に変わらないこの場所を『時の果ての監獄』などと呼ぶ者もいるらしい。
「これでいいのさ。私はもう、世界に関わらないと決めたんだから」
『世界の果て』に塔を造り上げ、引きこもって幾星霜。変わらぬ景色に飽き果て、窓硝子には外界の景色を映すことにした。
居間の窓には南の海、寝室の窓には遙かな夜空。
そして書斎の窓には、ざわめく世界樹。
古文書の頁をめくりながら、梢の囁きに耳を澄ます。
「うん。今日も楽しそうだ」