雲一つない夏空を映して、海は青く輝く。
煌めく波間から時折見える銀色の背びれを追いかけて飛んでいると、不意に盛大な水飛沫が上がった。
「もう疲れたよ~。そろそろ休憩しよ~」
青緑色の髪を振って懇願する幼馴染みに、やれやれと速度を落とす。
「沖まで競争しようって言ったのはそっちだろ」
「全力で泳ぎ続けるの、飽きちゃった」
仕方なく着水すると、すぐ隣で大きな尾びれが水面を叩いた。
「ホント、オルトは空を泳ぐのが上手いよなあ」
「『飛ぶ』だろ」
「同じことさ」
人魚の言葉はいつだって詩的で、どこか哲学的だ。
「空と海は繋がってるんだって婆ちゃんが言ってた。だから鳥も泳げるし、魚だって飛べる」
海と空。近くて遠い、二つの青。