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五番街

 五番街は《世界樹の街》の中で最も細長い街です。魔法街ザナヴェスカの一角、《獅子門》広場から《巨蟹門》広場を繋ぐ《うわばみ通り》一帯のみが五番街と呼ばれ、魔術用品店や魔法薬店、魔法菓子店など、不思議なお店が軒を連ねています。
 《うわばみ通り》はぐねぐねと曲がりくねっており、一本道のはずなのになぜか迷ってしまう、不思議な通りです。はじめて訪れた方は、周囲の店をしっかりと確認しながら進むとよいでしょう。

 ザナヴェスカは周囲を険しい山脈に囲まれており、限りある土地を有効活用するため、高い建物が密集しています。そのため街全体が薄暗く、それを補うため街のあちこちに《星屑角灯》が掲げられています。
 魔術関係の店が多く、魔術士が多く訪れることから《魔法街》と呼ばれていますが、中には怪しげな店もあるようです。野良魔法生物の目撃情報などもあるので、街歩きには細心の注意を払いましょう。


獅子門

…一番街から繋がる門です。獅子門は常時開放されており、通行証等の提示も必要ありません。

尻尾広場

…獅子門前の広場です。魔術士ギルドの出張所や郵便局、観光客向けのお土産屋などはこの広場周辺に集まっています。

魔術士ギルド出張所

…主に魔術士の紹介や、魔術に関連する依頼の斡旋を行っています。魔術がらみでお困りの場合や、腕の良い魔術士を雇いたい時は、まずここを訪れるとよいでしょう。また《賢者の塔》への連絡窓口としても機能していますので、《塔》にご用の際は、ギルド出張所で取り次いでもらいましょう。

五番街郵便局

…尻尾広場に面して建つ郵便局です。五番街郵便局で郵便物を出すと、暗闇で光る特殊な消印を押してもらえます。ここでは通常の空便(普通・速達)に加え『空飛ぶ箒便』(超・速達)を利用することが可能です。配達先は限られますが、急ぎの際はとても便利です。

《魔法道具街》

…獅子門から青鱗広場までの一帯は魔法道具を専門に取り扱う店が軒を連ねており、こう呼ばれています。魔法の杖や箒、魔法薬の材料や調合用の器材だけでなく、長衣や帽子、旅行鞄の専門店、中には魔法の橇や馬車といった大物を扱っている店もあります。魔術士でないと入店できない店もありますのでご注意ください。

青鱗広場

…五番街の真ん中に位置する広場です。石畳に青みがかった石が使われていることからこう呼ばれています。
 広場の中央には『尻尾を飲み込む蛇』の銅像が飾られており、この蛇の輪を、どこにも触れずに見事潜り抜けることが出来たら願いが叶う、という『おまじない』がまことしやかに囁かれています。

《胃袋》

…青鱗広場から星見の塔までの一帯は、通りの両側に食料品を中心とした露店が並んでおり、こう呼ばれています。元々は月に数回開かれる朝市でしたが、いつしか常設の露店がひしめき合うようになりました。食材だけではなく、総菜やパン、菓子などを売っている露店もあり、食べ歩き目的で訪れる観光客も多いようです。

星見の塔

…五番街でもひときわ高く、ひときわ古い建物です。最上階の観測室には最新鋭の望遠鏡が取り付けられており、住み込みの研究員が毎夜、天体観測に励んでいます。

深淵の井戸

…星見の塔近くにある、とても深い井戸です。とても綺麗な水を讃えていますが、その水面は遥か下方にあり、人の目でははっきりと認識できないほどです。古くは占いに利用されていた、という説もあります。

逆鱗広場

…巨蟹門前の広場です。閉門時間に間に合わず、ここで一泊する旅人が多いため、広場周辺には宿屋や飲食店が集まっています。

巨蟹門

…四番街へ通じる門です。門扉等はなく、複雑な彫刻の施された巨大な石の門が立っています。他の門と異なり、正午から日没までの開門時間以外はザナヴェスカの街中(うわばみ通りの先)に繋がっています。門の上にからくり時計が設置されており、開門・閉門時間になると鐘を鳴らして知らせてくれます。


隠れた名店①:ヴァレスの店

…《魔法道具街》の一角にある《魔法の杖》専門店です。腕利きの職人が手掛けた一級品からお手軽な大量生産品まで、使用者と目的に合わせて選ぶことができます。また、素材を選んで店頭で組み合わせてもらうこともできます。完全受注生産も可能ですが、数ヶ月から数年かかる場合があります。

隠れた名店②:菓子店《オ・ルカ》

…《胃袋》にある菓子専門店です。ケーキやタルト、クッキーやパイなど、季節に合わせた菓子を取り扱っています。まれに、店主の知り合いが作っている『魔法菓子』を置いていることも。

隠れた名店③: 灯り屋

…星見の塔近くに店を構える灯り専門店です。星屑角灯を専門に取り扱っています。ラズロライトと呼ばれる特殊な鉱石を加工して生み出された星屑角灯は、周囲の暗さに応じて自動点灯・消灯するため、ザナヴェスカでは街灯としても使用されています。






五番街の歴史

 ザナヴェスカは元々、希少鉱石である《魔晶石》を採掘する鉱山夫のために作られた居住区でした。近隣に《賢者の塔》の一つ《北の塔》が建設されてからは、魔晶石の発掘・加工だけでなく、魔法道具などを扱う工房や商店が現れ、現在の魔法街へと発展していきます。
 次第に魔晶石が採れなくなり、三百年ほど前に鉱山が閉鎖されてからは、魔術士やその関係者ばかりが集まるようになり、次第に隠れ里の様相を呈してきました。
 うわばみ通りが《世界樹の街》五番街として組み込まれたのは二百年ほど前。当時開発中だった《転送門》が偶然、一番街と繋がったことがきっかけです。その後、《門》を維持する技術が生み出され、獅子門として整備されました。
 以降は他の街区経由の観光客なども増え、賑わいを増しています。

五番街から見た《世界樹》

 五番街の世界樹は、天を突く巨大な針葉樹です。ザナヴェスカ北端の丘にそびえる巨木で、冬場でも葉が落ちることはありません。周囲を針葉樹林に囲まれたザナヴェスカですが、何故この木だけが飛びぬけて巨大なのかは分かっていません。
 ザナン鉱山に眠っていた大量の魔晶石に影響されて巨大化した、という説が有力視されており、採掘量と反比例して生育が緩やかになっていった、という記録も残されています。





番外編:街の外を歩こう

 ザナヴェスカは北大陸アイシャスの西部、ライラ国の山岳地帯にある小さな街です。周囲を山に囲まれており、街へと続く道は馬車一台がようやっと通れるほどの、細く険しい山道です。冬場は雪で通行止めになることもあります。

周辺の名所① 《北の塔》

 ザナヴェスカの北東、更に険しい山岳地帯に建つ《賢者の塔》です。五大陸にそれぞれ存在する《賢者の塔》は魔術士の養成・研究機関であり、常時二十人から五十人ほどの魔術士がそこで研鑽を積んでいます。
 塔を束ねるのは《賢人》と呼ばれる存在で、その場所や時代によって人数が異なりますが、大概は三人から七人の賢人によって統治されています。
 《北の塔》を率いる現在の賢人は《銀老》シグル、《北の魔女》アルメイア、《極光の魔女》ユリシエラの三名です。

周辺の名所② ザナン鉱山

 かつてザナヴェスカが鉱山の街だった頃の名残です。希少な魔晶石の鉱山として栄えましたが、三百年ほど前に閉山しています。崩落の危険がある区画は立ち入り禁止となっていますが、坑道の一部は酒や魔法薬の貯蔵庫として活用されています。また、坑道の奥深くに構えた研究室に籠り、ほとんど地上へ出てこない魔術士もいるようです。


Column:氷の宮殿

…《北の塔》より更に北、一年を通して氷雪に覆われた峻嶮イル・ファーレには、女神アイシャスの宮殿があると言い伝えられています。
 アイシャスは水と美を司る女神として知られていますが、雪深い北大陸では氷雪の女神として祀られており、童話『六花の女王』は、氷の宮殿の伝承を元に描かれたと言われています。


幻燈書房発行『《世界樹の街》の歩き方 ~五番街編~』より抜粋




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