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最果ての塔
 その塔は、世界の果てに(そび)えている。

 ()きて帰らぬ最果ての島。
 すべての思い出が辿り着く場所。
 そこは――まさしく世界の果てだった。

 果てなき海と終わりなき空、その狭間にぽつんと浮かぶ島。
 泡沫の世界群から切り離された、隔絶された時空間。
 現実と交わらない座標軸。進まない時。永遠に繰り返される朝と夜。
 果てなき世界の、果ての果て。
 そんな最果ての島には、白亜の塔が建っている。
 
 塔に住まうは古き神。
 いくつもの世界を粉々に砕き、いくつもの可能性を棄てた神。
 創造と破壊の力を手放し、自ら幽閉を望んだ神は、今日も暇を持て余している。
 海岸線を彷徨き回り、時折流れ着く不思議な物を()めつ(すが)めつしては、手放すしかなかった世界(じゆう)に思いを馳せる。
 それが己に課された罰だと、分かっているからこそ。
 神は今日も、罪滅ぼしのために暇を持て余す。

「……というわけで、不思議な物が手に入ったから近々届けに行くよ」
『古き神とやらは幽閉されてるんじゃないのかい』
「自身の《影》を使って外に出る分にはルール違反じゃないだろう?」
『いい加減な制約だなあ』
Novelber 2020」 30 塔
 twitter上で行われていた「novelber」という企画に参加させていただいた作品。テーマは「塔」。
 最果ての島に住む《古き神》――今は《灰色の賢者》と呼ばれる人物のお話。
 このお題が書きたくて、どうしても最後に書きたくて、ずっとこの「#novelber」を書いてきたといっても過言ではありません。

(初出:Novelber 2020/2021.04.13)
2021.04.15


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