《ユージーン骨董店》は十二番街の《黄昏通り》にある、小さな骨董店です。
世界樹に一番近い十二番街は《最古の街》と呼ばれており、その中でも世界樹の根元にほど近い《黄昏通り》一帯は建物も少なく、訪れる者もほとんどいない、閑散とした区域です。
黄昏通りの突き当たりに位置する《ユージーン骨董店》は、住人の誰もが「いつからあったか分からない」と答えるほど古くから存在する店ですが、常に開店休業中で、客が入っていくところを見たこ
とがない、そもそもちゃんと営業しているのかも疑わしい、ともっぱらの噂です。
その割には頻繁に荷物が届いており、居留守を決め込む店主と、何が何でも受け取らせたい郵便配達員との攻防が繰り広げられています。
また、店内から異音がしたり、怪光線が放たれることもありますが、いつものことなので周辺住人は気にも留めません。
店主は森人のユージーン。十二番街の住人は親しみを込めて、『ぐうたらエルフ』『垂れ耳のおじさん』と呼んでいます。
幻燈書房発行『保存版・《世界樹の街》の歩き方』より抜粋