トパァズ
猫の名前といえば、ミケだのトラだの、毛並みから取られることが多いようですが、そうした先例に則るならば「クロ」と呼ばれるべき私を、ご主人は「トパァズ」と名付けたのです。「お前の瞳は闇夜に光る宝石のようだ。故に私はお前をトパァズと呼ぼう」 そ…
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凱旋
勇者が魔王を討伐した――その一報がもたらされた瞬間、国中が歓喜に包まれた。 世界の果てにある魔王城を目指して旅立った若き勇者一行。彼らの旅路は想像以上に険しいものとなった。 幾度も裏切られ、仲間を失い――最後はただ一人、魔王城へと乗り込ん…
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モノ
「また大葉を残しましたね、博士」 皿の隅にちんまりとまとめられた大葉の千切りに、やれやれと肩をすくめてみせる。「苦手だと言っただろう。忘れたのかね」「いいえ、博士。ですがこのパスタにはバジルよりも大葉が合うのです。幼少期の好き嫌いを引きずら…
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figment
人間が想像できることは、人間が必ず実現できる――。そんな言葉を残した作家は、果たしてこんな未来を見据えていたのだろうか。 二十一世紀。異常気象と度重なる紛争で疲弊しきった人類は、とても緩やかとは言いがたい曲線を描いて数を減らしていき、文化…
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誕生日
私はそう、誕生日が嫌いだった。 三月――要するに学年末の生まれは、何かと不遇だ。 特に幼少期など、同じ学年の早生まれとは明らかに体格も違うし、発達具合だって半年以上の差がある。 一ヶ月の新生児と六ヶ月の乳児はまるで別物だと誰でも言うだろう…
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ひとめぼれ
目が合った。まさにそういうことだろう。 気づいた時にはぎゅっと胸に抱きしめて、レジへと向かっていた。 給料前の財布には些か厳しい出費だったが、気にしないふりをしよう。 お店で一番大きい袋でも入りきらない大きさだったから、そのまま抱きしめて…
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茨の聖女
1.茨の聖女 戦いは佳境を迎えていた。 《瘴気の森》から次々と湧いてくる瘴魔の群れをおびき寄せ、砦へと誘導する。言葉にするのは簡単だが、実行するのは中々に骨の折れる仕事だ。「一匹たりとも逃がすな! こちらへ引きつけるんだ!」 実体を持たぬ瘴…
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失われた物語
人は死して神の国へと誘われる。ならば人の生み出したものは、一体どこへ行くのだろうか。「げえっ、何でこれがここに……」 天国の広大な図書館に収められていたのは、破棄したはずのプロットや投げ出したはずの未完原稿。「日の目を見ることなく失われた…
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花紅柳緑
王の寵愛を得るために、後宮の妃達は競うように着飾り、化粧を重ねる。 日毎に華やかさを増す女達を前に、しかし王は「美しくない」と首を横に振リ続ける。 王が召したのは貧相な下女。「この世のものとも思えぬ美しさよ」 化粧を知らぬ肌、飾らない笑顔…
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気の早い王様
《あの世》に繋がる門が閉じた朝、街からかぼちゃが片付けられるのを待ちきれずに、王は赤い外套を身にまとう。「降誕祭の準備をせよ!」「良い子の調査が間に合いません」「トナカイが逃げた」「七面鳥もだ」 城も街も大騒ぎ。祭好きの王を満足させるため…
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NNN
『その時』は不意に訪れて、そしてヒトはそれに気付かない。 家から、街から、世界から、すべての猫が消える。まるで示し合わせたように、一斉にいなくなる。 ヒトはそのことを疑問にも思わない。「あら、どこに隠れてるのかしら」で済まされてしまうほど…
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秋景
VR世界《EDEN》にも秋が来た。木々は赤や黄色に染まり、澄み渡る空には赤とんぼが舞う。 絶景スポットは各所にあるが、なかでもこの《YAMATO》サーバは格別だ。夕焼けに染まる寺院を見ながら季節限定メニューに舌鼓を打つ、なんて贅沢も、比較…
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