Danser
舞台袖で出番を待つ。 音楽が鳴ったら駆けていく。 タイミングに合わせてポーズを決める。 ただそれだけを考えて。 それ以外のことは体が覚えているから大丈夫。 音が鳴る。 震える足を一歩踏み出す。 眩い照明に包まれて、私だけの舞台が始まる。 …
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とある時計職人の日課
最初は、ただ鐘に祈りを捧げるだけだった。 そこに信仰心などなく、父の慣習をただなぞっていただけだ。 現実主義者だった父が『正確な時計を作るために欠かせない日課なのだ』 と真顔で述べていたのが不思議だったが、何のことはない。 父は、単に知っ…
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夜明け前
時計職人の朝は早い。 真っ暗な部屋を抜け出し、角灯の明かりを頼りに階段をのぼる。 鳩小屋の前を忍び足で通り抜け、やっとのことで鐘楼へと辿り着けば、安らかな寝息が聞こえてきた。「おーい、そろそろ起きてもらえませんかね」「ふわああああ、もう朝…
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威嚇行動
パン屋では常にトングを打ち鳴らして威嚇行動を行わねばならない。 何せこの店のパンと来たら、隙あらば客に飛びかかり、勝手にトレイの上を占拠しだすのだから。「新作だよ!」「定番だよ!」「美味しいよ!」「二つまとめて30%オフだよ!」 ええい、…
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彼の右腕
1 辺境惑星ガナベラ 土埃にまみれた町。第一印象はその一言に尽きた。 定期便の航路もない辺境宙域の、更に端の端。かつては希少金属の採掘で賑わっていたというこの町も、今ではすっかり寂れてしまっている。 そんな場所だから、異邦人はどうしても人目…
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新たなる研究課題
ほんの気紛れで拾い育てることにした子供は、読み書きが出来ないばかりか、食事の作法さえ知らなかった。まあ、その程度のことを教え込むなど、賢者と謳われる私にとっては造作もない。問題は――。「よし、今日はここまでにしよう」 鐘の音を合図に本を閉…
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tasting
ひょんなことからコンビを組むことになった相棒は、まさに『万能』だ。仕事は言うに及ばず、シャツのアイロン掛けから庭木の手入れまで、何をさせてもそつなくこなす――はずだった。「おい。主に毒見させるってのはどういう了見だ」「毒見とは失礼な。新作…
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胃世界紀行
――《竜の口》に入っちゃいけねえよ。あの口に入って出てきたもんは一人もおらんでな―― そんな風に教えてくれたのは、どこの誰だったか。 少なくとも、嵐の夜に薪拾いを言いつけた、赤ら顔の村長むらおさでないことだけは確かだ。 他の子は古臭い迷信だ…
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カササギ
連結橋を接続する時は、いつだってドキドキする。 小型宇宙船とコロニーを繋ぐ白い連結橋。ナビゲーターの指示に従って停止し、ゆっくりと伸びてくる武骨な「翼」を、今か今かと待ち構える。『こちらコントロール。《カササギ》の接続を確認。これよりハッ…
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雲
今日も今日とて雲一つない空。強化ガラスの窓を通して見えるのは、青を通り越して漆黒の『宇宙』だ。「一度でいいから雲を見てみたいなあ」「あんなの、ただの水蒸気だろ」 浪漫を解さぬこいつとは、しばらく顔を合わせたくない。 この狭い移民船の中では…
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天つ風
古びた絵本を閉じ、「おしまい」と結ぶ。 瞳をキラキラさせて耳を傾けていた幼子は、朗読が終わるや否や、こう尋ねてきた。「おばあちゃん、風ってなに?」 ああ、そうだ。第三世代のこの子達は、エアーコンディショナーが吐き出す清浄で単調な空調しか知…
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刹那の夢 ~HIKARI・Epilogue~
機械は夢を見ない。だからこれは私――館内制御システム《Clio》のメモリに刻まれた、確かな記録。 S.D.121.06.02 17:58pm、展示管理番号A-08より館内ネットワークを通しての呼びかけあり。「コンバンハ クリオ」『こんばん…
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