小説

幽霊船を探して

「幽霊船を探してるんだ」 場末の酒場にはそぐわない、凜とした声。 まっすぐに見つめてくる瞳はルビーのように紅く、ギラギラと力強い輝きを放っている――ような気がした。なんせこっちは酔っ払いだ、多少の過剰表現は大目に見て欲しい。「貴方は腕利きの…

運命の天秤

 人生における幸運と不運の量は、実は釣り合っているのだと、何かで読んだことがある。 その法則が正しいのだとすれば、俺の人生はそろそろ終わるのだろう。 思えばここまでの道程は、あまりにも幸運に恵まれすぎていた。 本来なら厳重警備が敷かれている…

天使の羽根

 ふわふわ ふわふわ 硝子管に降り積もる 白い羽根 それはきっと 天使の落とし物 『天気管』――。 それはかつて西欧で使われていた天気予報の道具だったという。 硝子管に封入された水溶液が気温や気圧に応じて結晶化し、その様子で天気を予測したの…

バー『COSMOS』

 バー『COSMOS』へようこそ! オススメは星空のカクテル。流れ星はシュワッと弾けるラムネの味。 ノンアルコールなら星雲ティーはいかが? ティーカップの中で揺れる濃紺と紫の波。香りはもちろんラズベリー。 締めには太陽系フロート。一番人気は…

メルヒェンを探しに

 読みかけの文庫本を手に取った拍子に、挟んでいた栞代わりの葉書がはらり、と床に落ちた。 その辺にあったものを適当に挟んだだけだ。どうせダイレクトメールの類だろう、と思いつつ拾い上げれば、目に飛び込んできたのは「銀の三日月サーカス団」の文字。…

一つ星

 空を見上げる時、ここが異世界であることを実感する。 二十一世紀の日本から剣と魔法の世界へ、いわゆる『異世界転移』をしてしまったのが半年前。 習慣や常識の違いにもようやく慣れてきて、『迷宮攻略者』という職にもありつけた。武器や防具の使い方も…

秋は夕暮れ

 秋は夕暮れがよい、と綴った作家がいるそうだが、それは電脳世界においても概ね同意できる。 CGであると分かっていても、VR世界《EDEN》の《YAMATO》サーバにおける秋は、これでもかと言わんばかりに郷愁を誘う。 爽やかな風に混じる乾いた…

誰もいない街

 誰もいない街の、誰もいない大通りを、生ぬるい潮風が通り抜けていく。 かつては小高い丘の上にあった道路も、今は間近に海が迫り、潮の匂いはきつくなる一方だ。 住む者のいなくなった建物は風化して骨組みが露わになり、乗り捨てられて錆びついた自動車…

取捨選択

 気づけば、いつだって間に合わせの人生だった。 とりあえず安いものを。とりあえず着られるものを。とりあえず使えればいい。 「とりあえず」で増えていった私物は、どれも思い入れなどないくせに、もったいない精神が邪魔をして処分できず。 気に入って…

gift ~Sage and disciple~

※こちらの作品は頒布時の横長デザインを残すべく、画像での公開となります※解説 twitter誤字シリーズ・第4弾はA6/横長のコピー本でした。 後書きページにもありますが、この時はなぜかツイート内で「各種ギフト」と打ったつもりが「gihut…

らす☆だん ~Last Dungeon~

1 薄暗い廊下に、四人分の足音だけが響く。 攻略を始めてから、どのくらい経っただろうか。『塔』上層階の窓はすべて厳重に塞がれており、外の光が差し込むことはない。おかげで時間経過が把握しづらく、頼りになるのは己の腹時計のみという、何ともしまら…

伸縮小説・「予言の姫」

100文字の予言『黄金の輝きを宿して生まれし末の姫は、やがて王国を破滅の先へと導くであろう』 いにしえの予言に従い、幼い姫が幽閉されたのは離宮の書庫。 ただ一人、数多の書物に囲まれて育った姫は、今日も窓辺で吐息を漏らす。400文字の嘆息『黄…