伸縮小説・「予言の姫」 - 2/5

400文字の嘆息

『黄金の輝きを宿して生まれし末の姫は、やがて王国を破滅の先へと導くであろう』
 いにしえの予言に従い、幼い姫が幽閉されたのは離宮の書庫。
 ただ一人、数多の書物に囲まれて育った姫は、今日も窓辺で吐息を漏らす。
「ああ、つまらない」
 すべては書物が教えてくれた。この世の成り立ちや沢山の動植物。異国の言葉や風習。
 喜びや悲しみ、怒りや憎しみといった感情さえも、古今東西の物語から学び取った。
 頁をめくるたび、新たな世界が拓かれる。その瞬間がたまらなくて、眠る間も惜しんで読書に励んだ。
 けれど蔵書には限りがある。まして、誰も近寄らぬ書庫に新たな本が補充されるわけもない。
 ここには世界のすべてが詰まっているのに、「つまらない」と姫は嘆く。
「読んだことのないお話が読みたい!」
 地団駄を踏んだところで、空から本が降ってくるわけもなく、幽閉が解けるわけでもない。
 故に、姫は自らペンを取る。
 誰も知らない物語を、己が手で紡ぐために。