AIのカタチ - 1/3

 かつて『機械が人間の生き甲斐を奪う』などと揶揄やゆされた時代もあったが、人手不足を補うために投入されたアンドロイド達は、今や人間社会に不可欠な存在となった。
 古典SFに描かれたような『人工知能の叛乱』も今のところ起きておらず、彼ら/彼女らは『頼れる友』としての地位を確立している。

 さて。人口減少に伴う人手不足はアンドロイド達によって解消されたものの、人類滅亡を食い止める画期的手段は、未だに見出されていない。
 まあ、人類が滅ぶ前に私の寿命が尽きることは明白なので、私にとってこの問題は、そこまで切実なものではない。一個人が出来ることには限界があるのだし、生命も文明も、この宇宙そのものさえも、やがては滅びるものだ。それが世のことわりで、例外などない。
 しかし――ここに来て、斜め方向に転換した未来が示された。
 『命の在り方』そのものを変える未来だ。

 これまでは概念でしかなかった『デジタルワールド』。三次元のその先へ続く道が、開かれようとしている。
 人間の精神を肉体から切り離し、新たなる世界――『電脳世界サイバースペース』へと繋ぐ技術の発明は、緩やかに滅びゆく我々人類にとっての転換点となった。
 最近では電脳世界に『移住』する者も増えており、これならいずれ『生物としての人類』は滅びたとしても、存在の仕方を変えてしぶとく生き残るのではないだろうか、とまで囁かれている。
 もっとも、現在の技術では現実の肉体(正確には大脳)が活動を停止すれば、電脳世界での人格アバターも消えてしまうのだが、いずれはその『命の在り方』の壁さえ、軽々と突破していくだろう。

 新天地を求め、どこまでも航海を続けるもの。
 それがきっと、『ヒト』の在り方なのだろう。

 どこまでもお供しますよ、とてらいなく差し出される友の手を借りて、この老骨もそろそろ重い腰を上げようか。

 それでは諸君――良い航海を。

ヤン=カレル著『形而上の愛について』 著者あとがきより