硝子戸の向こうは、まさにバケツをひっくり返したような雨。
テレビから流れてくる「ゲリラ豪雨に警戒を」という天気予報士の訴えすら、雨音に掻き消されている。
「もうちょっと早く言って欲しかったねえ」
苦笑交じりに戸を開ければ、店外のベンチで昼寝を決め込んでいた看板猫がぬるりと入ってきた。
やれやれと肩をすくめつつ、可動式日よけのハンドルを回す。この雨だ、雨宿り先を求めてやってくる客もいるだろう。
「やあ、我楽多屋さん。ちょっと寄らせてください」
早速飛び込んできたのは、顔馴染みの不動産屋だ。
「いやー、困っちゃいますね、ゲリラ豪雨」
いやはや、何とも風情のない呼び名が定着してしまったものだ。
「夕立、というんだよ」