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番外編 追憶の《青》 [更に番外編・神殿長のため息]

「ったく……何しに来やがったんだ……」
 などとブツブツ呟きながら足早にその場を去っていく息子の後姿を、神殿長は深いため息と共に見つめていた。
 いつの間にか背中を越えて伸びた髪を揺らして、その後ろ姿が廊下の向こうに消えていく。
 足音が聞こえなくなってから、神殿長ダリス=エバストは無人になった懲罰房をそっと見やった。
 簡素な寝台以外は何もない部屋。懲罰房と銘打っているが、何の事はない。牢屋そのものである。敬虔な信者であれば恐らく生涯縁のないこの場所に、何度養い子は閉じ込められた事だろう。そして何度、理不尽な罰を受けただろう。
 どこかぎこちなかったラウルの動作。神官服で隠れたその背中にどんな「罰」を受けているのか、凡そ見当はついていた。
 かつて貴族の間では、子供の躾に鞭が使われていた。言って聞かない者には体で覚えさせる。人間も、そして動物も同じ事だと、副神殿長ドゥルガーなどは平然と言ってのける。その言葉通り、これまで幾度となくラウルは体罰を受けてきた。しかも、躾や戒めなどという生易しいものではない、あからさまに傷つける事を目的として行われる「罰」だ。
「……お前という奴は……」
 元はといえば態度の悪いラウルがいけないのだが、それだけではない。神殿長の養子。そして、貧民街で拾われてきた、どこの馬の骨とも分からぬ浮浪児。そういった目で彼を見る人間が、この神殿には数多くいる。それだけの理由で彼を毛嫌いする者も、隙あらば罰を与え、願わくば神殿から排除したいと思っている輩も。
 神殿長という立場にある彼には、ラウルを無闇にかばう事は出来ない。そうすれば彼らの非難の矛先は自分へと向けられ、それこそが彼らの真の目的だと分かっているから。
 彼らが真に疎んでいるのは、本神殿長ダリス=エバストその人だ。規則と慣習に凝り固まった神殿を変えようと日々奮闘する彼を、副神殿長を筆頭とした保守派の連中は快く思っていない。何か理由をつけて失脚させようと企んでいるのは明白だった。
 恐らくはラウルもそれを承知しているからこそ、他の神官とは明らかに扱いが異なる事に異議を申し立てず、それでいて尚、彼らを嘲笑うかのように遊び呆けているのだろう。
 そして。
 ラウルは養父に何も言わない。恨みつらみも、文句の一言すら。
「お前を引き取ったのは……間違いだったのかもしれないな」
 もし、あの時ラウルを養子にすると言わなかったなら……。そんな、今まで幾度となく自問自答した言葉が唇から零れそうになるのを、すんでのところで飲み込む。
 歴史に「もし」はない。いくら悔やんだところで、過去は変える事が出来ない。
 なぜ彼を養子にしたのか。周囲から幾度となく問われたその質問に、いつもダリスは決まってこう答えてきた。
「なんとなく、だ」
 同じ答えをかつて、なぜ結婚しないのかという問いに対して使っていた気がする。ダリスは本心からそう答えているのに、周囲は納得してくれなかった。今も同じだ。
 なんとなく。気が向いて。これほど分かりやすい動機もないだろうと思うのだが、どうにもはぐらかしているとしか思われない。結果、様々な憶測が飛び交う事になった。養い子がユーク神官としての資質を開花させてからは、跡取りにするために拾ってきたのだという噂まで広まったものだ。
 ダリスにしてみれば、子猫を気紛れに拾ってきたようなものだった。路地裏で倒れていた子供が放っておけなくて、拾って育てた。もっとも、拾ってみれば猫ではなくて狼だったわけで、その獰猛さと警戒心の強さに、予想以上に苦労する羽目になったが。
 それでも何だかんだであれから十年以上が過ぎ、拾ってきた子供は一人前の神官となった。些かヤンチャが過ぎるが、それでも神殿を出て行こうとはしない。苦痛でしかないはずの神殿暮らしを、ラウルは今も続けている。それがダリスに恩義を感じての事なのだとしたら、自分はラウルに鎖をかけた事になる。義理という名の見えない戒めを―――。
「すまない……ラウル」
 そんな呟きをもらして、神殿長は懲罰房を後にした。そのヤンチャな息子を訪ねに来た美人の顔をもう一度拝むために。そして、恐らくはろくに手当ても受けていないだろうラウルを、なんとか宥めすかして治療するために。

◇ ◇ ◇

 裏庭からかすかに聞こえてくる声に、神殿長は小さく微笑んだ。
 あの養い子にこの場所を教えたのは、誰でであろう彼だ。かつてこの小さな庭は、彼の昼寝場所だった。流石に年を重ね、地位を重ねてからはこんなところで昼寝をするわけにもいかなくなったが、昔はよく仕事をサボってここに来たものだ。
 そして彼からこの裏庭を教えられたラウルもまた、若かりし頃の彼と同じようにしょっちゅうここに来ている。血こそ繋がっていないものの、やっている事は同じだから面白い。
 さて、その養い子といえば、泣き出してしまった女性に困り果てた表情を浮かべていた。
(まったく、何をやっているんだ……)
 彼が町で浮名を流しているのは勿論知っている。特定の相手を作る事がほとんどない事もまた。
 そして、彼がこれまで付き合ってきた女達といえば、大抵が化粧の派手な商売女がほとんどだった。それをどうこういうつもりはない。素人娘に手を出しまくるよりよほどいい。付き合い方を弁えている彼女達は、余計な事を詮索したり、家庭事情に首を突っ込んだりしない。神殿仕えをしているラウルとは街でしか逢瀬を重ねられない事をきちんと心得ている。
 だから、この神殿まで押しかけてきた娘は、今ラウルの前で泣きじゃくっている彼女が初めてだった。
 先ほど門番の注進を受けて様子を見に行った時はちら、としか拝めなかったが、かなりの美人である事は分かった。それも、今までの女達とは違った、清楚で可憐な雰囲気の娘だ。
 そんな彼女の涙に、ラウルは戸惑いを見せている。なんと情けない事だ。
(女を泣かせて、ただ見ているだけとはな……)
 あまりにも不甲斐ない息子の態度に思わず出て行ってやろうかと思ったが、思いとどまった。
 ラウルが、意を決したように彼女を抱きしめ、その耳元に何か囁いている。それを聞いた彼女はもう少しだけ泣いて、そして顔を上げた。化粧は涙で流れ、目も腫れていたが、その顔には上辺だけではない美しさが溢れていた。
(ふむ……あの小僧にはもったいない位だな)
 そんな感想を養父が抱いているとは露知らず、ラウルとフェリキアは楽しげなやり取りをしている。
 そして、汚れてしまったラウルの上着を持って水場へと走っていく彼女に、神殿長はにやり、と笑みを浮かべると、ラウルに気づかれないよう足音を殺してその場を離れた。

「どうしました、お嬢さん」
 突然背後から響いてきた声に、フェリキアはハッと振り返った。
 少し離れた木陰から声をかけてきたのは、柔和な笑みを浮かべた神官。恐らくは六十近いだろうその神官は、穏やかな瞳でこちらを見つめている。
「申し訳ありません、水場を使わせていただいてます。その……上着を汚してしまったものですから」
 怒られるとでも思ったのか、恐縮しきった声で言うフェリキアに、その神官はそうですか、と笑いかけてきた。
「それは難儀な事ですね。どうぞ、続けてください。早く洗わないと、染みになってしまいますよ」
 その言葉に慌てて洗濯を再開するフェリキア。袖が濡れるのも厭わずにせっせと染みを落とす彼女を、神官はしばらく黙って見つめていたが、ふと尋ねてきた。
「お嬢さんは、先ほどエバスト神官を尋ねてきた方かな?」
 そう言われて一瞬目を丸くするフェリキア。そしてすぐにそれがラウルの事を言っているのだと気づいて、はい、と頷く。
「あの……ラウルちゃん、じゃなかった、エバスト神官が神殿を抜け出したのは、私のせいなんです。だから、本当なら私が罰を受けるべきなのに、そう思って何度もこちらを伺ったんですけど、いつも門前払いされてしまって……」
 だから、と言い募る彼女をそっと制止して、神官は静かに告げた。
「原因がお嬢さんにあったとしても、規律を破ったのは彼本人だ。お嬢さんが心を痛める必要はないでしょう」
「でも……あんな酷い罰を受けるだなんて……」
 フェリキアの言葉に、神官の表情もすっと曇った。
「……彼は、神殿上層部から疎まれてね。素行が悪いのになまじ才能があるものだから、嫉妬する者も多い」
 そう。本来ならば、ラウルはすでに侍祭に昇格していてもおかしくないほどの能力を持っている。それもまた副神殿長をはじめとする人間達が彼を疎む理由の一つだった。特に、ラウルより数歳年上の息子を持つ副神殿長ドゥルガーは、やはりユークの神官位を得ている自分の息子よりもラウルの才能が上である事が腹立たしくて仕方がないらしい。
(こればかりは資質の問題なのだから、妬むだけ無駄だと思うのだがな……)
 努力すれば必ずしも報われる世界ではない。神官の能力は、どれだけ神から寵愛を受けるかで決まる。それは生まれついての資質が物をいうのであって、親の地位は無関係だ。まして血の繋がらないラウルと神殿長が共に優れたユーク神官の才能を持つのは、偶然以外のなにものでもない。
 とはいえ、それに納得いかない者達は大勢いて、彼らはこぞってラウルを目の敵にし、隙あらば罰を課し、神殿から排除しようとする。
「……確かに、素行がいいとは言えないけれど……でも、ラウルちゃんは、とても優しい、いい人です。それを神殿の方々にちゃんと分かって欲しくて……」
 そんなフェリキアの言葉にに、神官は嬉しそうに目を細めて頷いてみせた。
「ええ。分かっていますよ。あの子は、とても優しい子だ。そしてとても強い子でもある。だから、あなたもあまり心配をしないで下さい。あの子は、人から気遣われる事がくすぐったくて仕方ないのですよ」
 そんな言葉に、フェリキアは少し目を見張って、そしていたずらっ子のような瞳を改めて向けた。
「神官様、もしかしてラウルちゃんのお父様じゃありません?」
 唐突な言葉に、今度は神官が目を見張る。
「私が、ですか?」
「ええ」
 にこにこと笑うフェリキアに、神官は苦笑を浮かべる。
「どうしてそう思われる?」
「この間一緒に飲んでいた時に、『俺の養い親はとんだくそじじいだけど、俺の事をちゃんと見ててくれる。あの神殿内で唯一尊敬できる人間だ』って、照れくさそうに言ってたんです」
「ほぉ……」
 初めて聞いた息子の胸の内。普段あれだけ憎まれ口を叩いておきながら、そんな風に思っていてくれたとは。
(全く、あいつときたら……。いや、人のことは言えんな)
 素直じゃないのは、きっとお互い様だ。
「となると、初対面のお嬢さんにまで、私がくそじじいに見えると、そういう事かな?」
 茶目っ気たっぷりの瞳で言ってくる神官に、フェリキアは慌てて首を横に振る。
「とんでもない!ただ、ラウルちゃんが尊敬する方なら、きっと神官様みたいな人だと思っただけです」
「そう、ですか……」
 否定も肯定もせず、ただそうとだけ呟く神官に、フェリキアは微笑んで頷きつつ、洗い終えた上着をぎゅうっと絞った。
「ふぅ、これで汚れは落ちたと思うけど……」
 食べ物の汚れだけではなく、内側には血の染みまでついていた上着。まだ多分に水気を含んだそれをきゅっと抱きしめたフェリキアは、ふと神官が後ろ手に持っていたものに気づいて口を開いた。
「神官様。手に持っていらっしゃるの、救急箱でしょうか?」
「ええ、そうです」
「よろしかったら、少しだけ貸していただけません?ラウルちゃんの手当てをしたいんです」
 おずおずと言うフェリキアに、神官はにっこりと笑って救急箱を差し出す。
「ええ、どうぞ。使い終わったら彼に預けて下さい」
 それでは、と踵を返す神官。そのまま足音もなく去っていく彼の背中にぺこん、と頭を下げて、フェリキアは救急箱を片手に裏庭へと戻っていった。

◇ ◇ ◇

 衝撃の告白の後、しばし他愛もない話を続けていた二人だったが、遠くから響いてきた鐘の音に、フェリキアは名残惜しそうに話を切り上げた。
「午後の公演を手伝うことになってるから、もう行くわ」
 そう言って立ち上がるフェリキアに、門まで送ると申し出たラウルだったが、彼女は首を横に振る。
「大丈夫。一人で帰れるわ。それより、ラウルちゃんはちゃんとお仕事しなきゃ駄目!」
 まるで子供を叱り付ける親のような言葉に、思わず苦笑する。かつて彼にこんな事を言ってきた女がいただろうか。
「はいはい、分かったよ。それじゃ、また夜にな」
「ええ。待ってるわ」
 嬉しそうにそう言って、足取りも軽やかに帰っていくフェリキア。その後ろ姿を見つめていると、不意に横から咳払いが飛んで来た。
「?……なんだ、あんたか」
 柱の陰からひょっこりと顔を覗かせている声の主に、ラウルは呆れた、とばかりに鼻を鳴らす。
「神殿長が覗き見すんなよな」
「何を人聞きの悪い事を。私はそれを取りに来ただけだ」
 神殿長が指差しているのは、椅子の上に置かれた救急箱。それで合点がいったラウルは、ぎろりと養父を睨みつけた。
「あんただったのか、暇人の神官は」
 こんなところに神官が通りすがるわけがない。とすれば、誰かが故意にやって来たと考えるのが自然だろう。そして、その故意にやってきてずっと二人の様子を覗いていたのだろう人間が、よりによって本神殿長その人とは。
「気を利かせてやったんだろうが。女性と事に及ぶのに、背中が痛んではさぞ大変だろうと……」
 しらっとした顔で言ってのける神殿長。
「……何言ってやがる、このくそじじい」
 胡乱げな瞳で睨みつけてくるラウルに、神殿長は澄ました顔で
「なに、冗談だ」
「……聖職に就く人間の冗談とは思えねえな。第一、俺にだって分別くらいあるんだぞ!」
「おや、それは初耳だな」
 厳粛なる本神殿で交わされるにはどうにもそぐわない会話を続けつつ、神殿長はフェリキアに託した救急箱を回収する。そして、そっとラウルに巻かれた包帯を見た。傷自体はすでに数日前のものだ。包帯の上まで血が滲むような事にはなっていなかったが、それでもその姿は痛々しい。
「……痛むか」
 呟くような問いかけに、ラウルは首を横に振ってみせた。
「この程度、怪我のうちにも入らないさ。心配しすぎだ。あいつも、あんたもな」
 そう言って、フェリキアが洗ってきた神官衣の上着をひょいと取り上げ、歩き出すラウル。その後を、ごく自然な様子で神殿長が追いかける。
「……おい、何でついて来るんだよ」
「神殿長が神殿内を歩いて何が悪い。たまたま行く方向が同じだけだ」
「嘘付け。この先は物干し場しかないぞ。あんたが物干し場に何の用があるってんだ」
「あるかも知れんだろう?ほら、いいから進め。それと、今晩もまた抜け出すつもりなら、せめて午後のうちに仕事をして行くんだな。ちょうど知り合いから護符の注文を受けたところだ。お前にも手伝ってもらうぞ」
「なんで俺がっ……」
 ふざけんな、と言いかけて、ふと先ほどのフェリキアの言葉が頭によぎった。
―――それより、ラウルちゃんはちゃんとお仕事しなきゃ駄目!―――
 彼女の言う事はもっともだ。仕事をサボってまた謹慎でも受けたら、折角の十日間が無駄になってしまう。
 あんたの事が気に入ってるらしい、とラウルは言った。本当はそれ以上だ。はっきり言って惚れていた。それでも、流石にそう口にする事は躊躇われて、気に入っていると言うにとどまった。
 彼女を男であるなどとは、もう思っていなかった。彼女は女だ。本物の女よりも女らしい、とびきりの女性だ。そんなフェリキアと過ごせるのは、たった十日間。それを過ぎたら永遠の別れが待っている。
「……分かったよ、やりゃいいんだろ、やりゃ!」
 不貞腐れたように言う息子に、父親はそうだ、と頷く。
「ああ、仕事さえこなせば文句は言わん。ついでに葡萄酒の一本も買ってくれば尚言う事はないな」
「……てめぇ、人を使い走りにする気だな?神殿長になってから大っぴらに飲みに行けないからって……」
 神殿内は禁酒禁煙が原則だ。 まして神殿長ともなれば、そうそう外に飲みに行く暇もない。酒好きには些か辛いこの規則に、ダリスは神殿長に就任するや否や、それらを含めた神殿内の規律を改定しようとした。勿論、副神殿長以下から猛反対を食らって規則改定には至らなかったのだが、それこそが彼を改革派と位置づけた出来事であり、そこから神殿長と保守派勢力との確執が始まったと言われている。
 それでもめげずにちょくちょく酒を自室に持ち込んでいるダリス。その片棒を担がされるのは決まってラウルであった。
「そう言うな。大義名分があった方が動きやすかろう?」
 ぐっと詰まるラウルを笑い飛ばして、神殿長は物干し場へと続く階段を軽快に上がっていく。
「先行くなよ、くそじじいっ!」
「だから、その言い方はやめんか、小僧。たまには「父上」とでも呼んでみたらどうだ?義理とはいえ、私はお前の父親だぞ」
「てめぇなんか「くそじじい」で十分だっ!一生そんなこっぱずかしい呼び方なんかしてやらねーから、覚えとけっ」
 怒鳴りながら、負けじと階段を駆け上がるラウル。
「……強情なヤツだな」
「……あんたに似たんだろ」
 ふう、と嘆息する神殿長。血は繋がらずとも、どこかで繋がっている。そういう事か。
(お前を拾ったのは……そう、お前となら、家族になれると思ったからかもな)
 なんとなく。なんとなくそう思ったから、彼は少年に手を差し伸べた。そして少年はその手を取った。それだけのこと。
「そういやじじぃ。前から思ってたんだけどよ」
 不意に足を止め、そんな事を言ってくるラウル。
「なんであんたは結婚しなかったんだ?」
 唐突な質問に、神殿長はなぁに、と嘯く。
「なんとなく、だ」
「……あんたの人生、そればっかだな」
「思うが侭に生きて何が悪い」
 胸を張ってそんな事を言ってくる神殿長に、呆れた、という顔でラウルは天を仰ぎ見た。
「なんであんたが神殿長なのか、ホントわかんねー」
「私にも分からんよ」
 穏やかな昼下がり。食えない父親と、こちらもまた一筋縄ではいかない息子との微笑ましいやり取りは、高く澄んだ夏の青空へと吸い込まれていった。

ここでもちょこっと作者の呟き

 番外編の番外編。予定外の長さに、「追憶の《青》」からカットしたエピソードです。
 噂のくそじじい、本神殿長ことダリス=エバストが出張ってます。いやはや、ホントに食えないお方……。書いていて一番楽しい方でもあります。この人じゃなきゃ、ラウルは育てられなかったでしょうねえ。
 本神殿内の人間関係は結構ドロドロしてまして、それが後にラウルの左遷へと繋がっていきます。本神殿長の息子でなかったなら、恐らくは謹慎程度で済んだはずです。
 もっとも、その左遷がなければこのシリーズは始まらないわけですから、そう考えると神殿長さまさまですな(笑)
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