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後 書 き  


etude01: 勘違い
etude02: 黄昏
etude03: 姉妹
etude04: 小さな秘密
etude05: 風邪
etude06: 
etude07: 優しい嘘
etude08: 封印
etude09: 御伽噺
etude10: 呪文
etude11: 望まぬ再会
etude12: 渡り鳥
etude13: 躊躇
etude14: 一枚の地図
etude15: こども
etude16: 鎮魂歌
etude17: 夢の続き
etude18: 結晶
etude19: 伝説の都市
etude20: 
etude21: 遠い約束
etude22: 告白
etude23: 
etude24: 架空の構図
etude25: 硝子細工
etude26: 片羽
etude27: 洗濯日和
etude28: ハタ迷惑
etude29: ひとひらの…
etude30: 流星雨
etude31: 花冠
etude33: 終焉の時
etude35: 楽園

etude01: 勘違い
etude01: 勘違い

 現在発表されている作品中では、味方側にばかりついている《金の魔術士》リファ。しかしリファとて、時には誰かに恨まれたり、仇として狙われたりするわけです。そういう一面を描きたくて始めたこの《gilders》シリーズは、[36 etude]の中でのみ展開していきます。
 ちなみに「gild」は鍍金(メッキ)を意味する言葉。のちに鍍金の魔術士(嫌な通り名……)と称される「そっくりさん」リダと、リファを父の仇と狙う少年ギルの旅路、どうぞお楽しみに!












etude02: 黄昏
etude02: 黄昏

 神崎由良さんから頂いた一枚のイラスト。それを見た瞬間に思いついた小さな小さなエピソードが、この「黄金」です。
 いただいたイラストのルフィーリがとても凛々しく、力強く見えて。伸ばされた手の向こう、その輝く笑顔の先にはきっとラウルがいるのだろうなあ、と思ったら、こんなお話に。
 ……ちなみに、こちらは「月に捧ぐ歌」より後のお話。より正確には、第三部(名称どころか内容もまだ不確定)の後のお話になります(^_^;) なので色々、「おや?」と思うところがあるかもしれませんが、それはあとでのお楽しみ(あとっていつだ……汗)ということで。













etude03: 姉妹
etude03: 姉妹

 北の三賢人ことアルメイア、ユリシエラの幼い頃のワンシーンでした。って、言わないと分からないですね(汗)
 彼女たちにも勿論幼少期はあった訳で(笑) アルはぽーっとしているくせにふらふらっとどこかへ行ってしまう三つ下の妹を、何だかんだ言いつつきっちり面倒見ていた模様。どこへ行ったか分からないユラの居場所をいともあっさり言い当てるアルを、周囲は大層不思議がっていたようですが、後にそれが二人の魔力によるものだと判明。(正確には、ユラが発する魔力をアルが無意識にトレースしていた)、その才を見出され、極めて珍しい姉妹の魔術士の誕生と相成ったわけです。
 今はとある理由で妹よりもちびっちゃくなっているアルですが、姉妹仲は変わらないようで、北の塔では甲斐甲斐しく姉の世話を焼く妹の姿が目撃されているとかいないとか(笑) って、立場逆転してるじゃん……(^_^;)














etude04: 小さな秘密
etude04: 小さな秘密

 腕のいい魔術士で腕っ節も強く、しかも(黙っていれば)美人なリダ。しかし彼女とて完全無欠であるはずもなく、その些細な弱点や欠点こそが彼女を「伝説のなんたら」ではなく「生身の人間」たらしめている。
 そのことに早々に気づいたからこそ、ギルも彼女との旅を続けていられるのでしょう。
 
 ギルだけが知る、小さな秘密。
 そして、少年が抱える、もう一つの秘密――。
 全ては物語の中で明らかになることでしょう。気長にお付き合い下さい(^^ゞ

 ちなみに、副題の「ウヲノメニナミダ」は松尾芭蕉の詠んだ「行く春や鳥啼き魚の目に泪」から。本来の意味は「飛ぶ鳥、魚も過ぎ去る春を惜しんでいる」というものだそうですが、ここでは単純に「魚の目に(リダが)涙」という意味で使いました(^^ゞ

 とかいいつつ、実は大好きなweb小説サイトさんの名前の一部を拝借したものだったり。この響きがなんか心に「ことっ」とハマるんです。












etude05: 風邪
etude05: 風邪

 リダでも風邪引くんだ……という突っ込みをする度胸はさすがになかったギル少年でありました(笑)
 ちなみに、作中の卵酒は「エッグノッグ」のレシピを参考にしています。子供やお酒に弱い人が飲む時はラム酒を抜いて作るんだそうですが、《底なし》リダにはむしろ多めで作ってあげた方が元気が出そうです(笑) 冷たいものが一般的みたいなんですが、やっぱりこっちの方が温まるんじゃないかと。
 そしてようやく出てきました、ギルが《金の魔術士》を父の仇と断定するに至ったエピソード。まだ全てを語り尽くしたわけではありませんが、これがなかなか決まらなくて(おい)難航したお話です。ギル少年がそれなりに旅慣れている理由もお分かりいただけたかなあ、と。












etude06: 虹
etude06: 虹

 珍しくリダ視点のモノローグです。幼い頃に見た虹の花。夜空に咲く大輪の花火に心奪われた……というお話は以前「異世界FTキャラを質問攻めだっ 」という質問で回答して以来、暖めてきたエピソードだったりします。
 このお話は漫画化を前提にして書いたものだったりするので、いつか漫画で読めたらいいなあ〜(^^ゞ












etude07: 優しい嘘
etude07: 優しい嘘

 タイトルの「Lieder ohne Worte《Glockenklang》〜 intermezzo 〜」はドイツ語で「無言歌《鐘声》 〜間奏曲〜」という意味。「無言歌」というのは「単純な歌曲のスタイルで書かれた器楽小曲」のことで、メンデルスゾーンのそれが有名ですが、今回は単純に「言葉のない歌」という意味で用いました。(あ、こういう曲はありません。念のため(^^ゞ )
 間奏曲と銘打ったのは、この作品が「未来の卵」と「月に捧ぐ歌」を繋ぐお話だから。ルフィーリが言葉を話すようになったその理由がここに描かれています。
 ユークが闇と死を司る神ゆえに、どうしてもラウル絡みのお話には「別れ」がつきまといます。別離は悲しみを伴うものですが、その先にはまた新しい出会いが、そして笑いあえる明日があるのだと、そう思います。

 世の中から悲しみが消えることはないのでしょう。幸せが消えることのないように。












etude08: 封印
etude08: 封印

 このお話、実は別のファンタジー作品として書こうと思っていたお話でした(^^ゞ 設定だけ作って話の内容はほったらかしのまま十年以上寝かせてしまったので、こちらに使わせてもらうことに。
 当初の設定ではカードに封印されていることになってましたが、カードだと何百年ももたないだろうというのと、冒頭の”ショーウィンドウを覗くギル少年”の構図が頭を過ぎったので、見栄えを考えて駒にしてみました(^^ゞ 持ち運びの面では不便になったかも……(^^ゞ
 珍しくリダが女性と仲良く、しかも対等な力関係で話しているところを書きました(笑) リダとは違うタイプの「強い人」を書こうとしたらああなったダイアン。かなりお気に入りのキャラです。
 彼女の話を聞いて、二人の脳裏には例の魔術士の姿が過ぎったことでしょう。真相は、いずれ語られる機会が……あるかも?

 ちなみに、二人で対戦しまくって腕を磨き合った結果、ほぼ同レベルになってしまったリダとギル。世間に《王国盗り》ブームが巻き起こって、やたら対戦を申し込まれるようになったのが鬱陶しくて、ある時期を境に《王国盗り》をしまいこんだようです。たまに荷物の底から引っ張り出しては、ダイアンとの再戦を夢見ていることでしょう。












etude09: 御伽噺
etude09: 御伽噺

 『御伽噺のような本当のお話』をテーマに書いてみました。御伽噺は必ずしも真実を伝えない、という内容になっちゃいましたが(笑) 珍しくリダもギルも脇役に徹してます(笑)
 ちなみにこれは九周年記念企画「苦労人展覧会」に出した作品。ちょっと企画内容にそぐわない気もしたんですが、苦労人ギルが出ている話ということで(^^ゞ 強引に載せてみました。
 連載開始から五年(^^ゞ ギルのフルネーム&お父さんの名前がやっと出てきました〜。
 今回の舞台は中央大陸。まだラルス帝国の大陸統一以前のお話なので、小国の名前がちらほら出てきます。












etude10: 呪文
etude10: 呪文

 2005年のお年玉企画として募集したオリジナルキャラクター、一人目はネリー婆さんことネリュレイア様です。
 設定を見た瞬間に「リダの師匠(的存在)にしよう!」と決めました(笑) ただ、あのリダがおとなしく人の下について学ぶとも思えないので(笑) 幼い頃のピンチを救ってもらった恩人、ということで。
 折角の「薬を扱うお店のお婆さん」という設定があまり生かせなかったのが残念ですが、二十年ぶりの再会の後、リダの魔法薬の腕前を見て苦笑いをしたり、その実験台にされている哀れな少年にこっそり万能解毒薬を渡してやったりしてそうです(笑)
 ちなみに、「湖畔の街ルークス 謎の凍結事件」では、彼女の家族もまとめて凍りついた模様。あの時ネリュレイアが来なかったら、永久に氷漬けにされていたかもしれません(汗)

 ……蛇足ですが、ネリーが教えた「とっておきの呪文」は自己暗示のようなもので、正確には呪文じゃありません(^_^;) それであれだけの効果が出たこと自体が凄いことなんですが(^^ゞ
 八仙花さん、素敵なキャラクターをありがとうございました!













etude11: 望まぬ再会
etude11: 望まぬ再会

 リダの本名と過去と年齢(笑)が垣間見えた今回のお話。ちなみに、父親だけでなく母親も勿論います(^^ゞまだバリバリ元気で、故郷の町に暮らしております。
 魔術士になるには生まれ持っての魔力が必要不可欠なので、魔術士の親から必ずしも魔術士の子供が生まれるわけではありません。故に彼女達のように親子で魔術士というのはかなり稀です。
 この時点でリダは29歳、ギルは14歳。旅立ってから一年以上経過していますが、未だに《金の魔術士》リファには掠りもしてませんね。さてさて、この後どうなっていくのか……。












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etude13: 渡り鳥

 ギルの独白風小話。実際の渡り鳥は彼らのようにあちこちふらふらしているわけではないと思いますが(^^ゞ 定住することなく旅から旅の暮らしを続ける自分達の姿が、あの小さな鳥に重なって見えたのでしょう。
 副題の「十の月のツバメ」はNHKスペシャル「大英博物館」のサウンドトラックに収録されている「SWALLOW」の歌詞からいただきました。実はこの話自体、この曲から想起したものだったりして(^^ゞ












etude13: 躊躇
etude13: 躊躇

 五周年企画「あれこれ質問BBS」にていただいた「ラウルさんと村長さんに質問です。幸せを感じる瞬間ってどんな時ですか?それと今まで生きていてよかった、と思った時はどんなことでしょう」という質問に対する村長の回答。そこから膨らませたエピソードです。
 私自身は出産に「立ち会った」ことがないので、彼の心境はほとんど想像だけで書きましたが、産む方からすると最後の「もういい、もういいよ」というのが本音だったりします。もっとぶっちゃけるなら「どうしてこんなに苦しいの、早く終わらせて。っていうか、もういいからとにかく早く出てこいや(怒)」って感じで(笑)
 しかし、あれは恐らく本人よりも見ている方が辛いと思うので(本人は自分のことで手一杯でそれどころじゃない)、立ち会う家族というのは凄いなあ、と思います。












etude14: 一枚の地図
etude14: 一枚の地図

 20万キリリク小説です。リクエストは「ゲルク様の若い頃、冒険者としての彼の活躍を戦友の精霊使いと絡めて。できれば竜の話も含め」というものでした。これだけでは書きにくかろうと、この36 etudeの中から「一枚の地図」を副題に選んでくださいまして、そこからああでもないこうでもないと話を練っていったら、こういうシロモノに。
 ちなみに、仲間の精霊使いグランの名前は「石榴」の学名Punica granatumから取りました。精霊使いだからという訳ではありませんが、正式名が長いです(笑) これは以前チャットで「でんたまには三文字の名前のキャラが多い」という話になり、じゃあいっそのこと十文字くらいの名前にしてみるか! という話になったので、頑張ってみました(笑) でも略称はやっぱり三文字(^^ゞ
 『影の神殿』との戦いでゲルクと共に戦い、仲間の中で唯一生き残った精霊使い。本編に「ゲルク以上のひねくれ者」という記述がありましたので、嬉々としてデザインしたらとんでもない奴になってしまいました。そして若かりし頃のゲルク様は、熱血で一直線でお節介焼きのお坊ちゃまに(笑) 自分にないものを持っているグランにライバル意識を燃やしているようですが、見事に空振っているようです(笑)

 さて、このお話の中で最初に思いついたのが、頭上を駆け抜ける竜の大群。あの精霊樹は、定期的に行われる竜族の集まりみたいなものの集合場所(というか目印)だった模様。そこで寝こけていた少女の正体は……うすうす気づかれたかも知れませんが――「彼女」です(笑)
 これで、何故「彼女」が未来の卵冒頭で、かつて精霊使いが住んでいたあの小屋を目指したかという理由が分かっていただけたかと思います。未来の卵執筆時点からなんとなくの設定はありましたが、この話が出来たことで、散らばっていたピースがまた一つ、しっかりハマった感じがしました。
 ZAKUROさん、素敵なリクエストをありがとうございましたm(__)m













etude15: こども
etude15: こども

 子供って時々、突拍子もない発想をするから面白い。
 かくいう自分も、小さい頃は「お兄ちゃん欲しい、作って!」と無茶な注文をしたりしてましたが(苦笑)
 あの無邪気さに振り回されることも多々あれど、それに救われることもたびたびあります。

 このお話、最初に思いついたのが「お母さん、ラウルさんのお母さんになって!」のくだり。そこから色々膨らませたらこうなりました(^^ゞ いやはや、レオーナもさぞ驚いたことでしょう。いきなり八つ下の息子が出来た日にゃ……。
 ちなみにこちらは収穫祭直前の話になります。この夜は年少さんたちと一緒のベッドに寝かされて、それはもうエラい目にあった模様(笑) 神官衣のほころびは、気の利く長女が翌朝までにぜーんぶ繕ってくれましたとさ。












etude16: 鎮魂歌
etude16: 鎮魂歌

 貧民街で暮らしてた頃の、ラウルのお話。
 このお題を決めた時から、これはラウルの話にしようと決めていました。ユークの声を聞く前、貧民街の片隅で生きていた頃の、悲しい出来事。
 世界の中心として栄える帝国、その影の部分を目の当たりにしてきた彼だからこそ、あれほどまでに強く、優しく在ることができるのではないかと思います。
 幼い少女がよく歌っていた、子守唄。
 その歌詞がユークの聖句に極めて近いことを知ったのは、大分後になってから。
 初めて歌った鎮魂歌は、きっと天へ届いたことでしょう。












etude17: 夢の続き
etude17: 夢の続き

 2005年のお年玉企画として募集したオリジナルキャラクター、ラストはオリーヴ=イクスリュートことオリバー君です。
 まず、流しの時計職人という設定がツボでした。そこに、前々から考えていた「時の狂った街」「仕掛け時計」「リファ」の三要素を組み合わせ、さらに既出の「結晶」にて杖が壊れていた理由を考えて、こんなお話にしてみました。
 とにかくプロット段階で長くなってしまって、なかなか手がつけられず(^^ゞ どちらかというと映像的なものが先に頭の中で出来上がってしまい、それをいかに文章にするかで延々と悩み続けたらこんなにも月日が経ってしまいました(T_T) も、申し訳ない……。
 後々、オリバー君が時計職人として名を上げ、その初期作品、しかも本名の刻印入りを所持しているリダが収集家に付け狙われるとか(笑) 色々後日談がありそうです。
 ちなみにこの世界ではまだまだ時計は高級品、特に携帯できるような小型の物はなかなか手に入りません。なのでリダもあれだけ喜んでいたわけです。

 輝凛さん、素敵なキャラクターをありがとうございました!













etude18: 結晶
etude18: 結晶

 雑然とした店が大好きです。足の踏み場もないほどに謎の商品で埋め尽くされた、薄暗い店内。あちこちから漂う異国の香り。にこにこ笑っているだけの、商売っ気のない謎めいた店主――。およそ人が寄りつかなそうな、それでも何故か潰れない、不思議なお店。
 そんな、私にとっての理想の店を追求したら、とことん怪しいお店になってしまいました。しかも店主は魔族ときたもんだ(笑) このジョーカー君はかなりのお気に入りキャラ。あのリダをからかえるような人間はそういないので、ギルに次ぐ突っ込み役として重宝しています。
 壊れてしまった杖、彼がリダに耳打ちした内容、そして最後に出てきた人物――。この辺りは後々アップされる話で順次明らかになりますので、どうぞお楽しみに! (時間軸通りに公開できていないので、色々と訳が分からなくなるかもしれませんが、そこら辺は平にご容赦を(^^ゞ)

 ちなみに、リダの魔力は人並み外れているので、そこいら辺で売っているような杖では耐え切れないようです。何しろ、余りある魔力を真面目に制御しようとしないんだから、それに付き合わされる杖の方がかわいそうってなもんで(笑)

 さて、ここにきてようやく魔術についての基礎的な知識を得たギル。とはいえ、魔力のない彼には魔術そのものは使えないので、もっぱらリダの助手として魔法道具の整理や点検、副業の呪符の作成(笑) にあたるのかな、と(^^ゞ
 ずぼらなリダにとって、ギルの存在は物凄く大きいと思います。でも素直じゃないから絶対そんなこと言わないし、ギルも怖くて聞けないんだろうなあ(笑)
 今後、リダの相棒として本領発揮となるかは、これからの努力にかかってます。頑張れ青少年!













etude19: 伝説の都市
etude19: 伝説の都市

 こちらは「星明かり亭・16周年記念企画」として、起・承・転・結のプロットならびにゲストキャラを投票にて決定し、それを元に小説を組み上げるというスタイルを取って書きあげたお話です。
 実はこのお題を思いついた時に、いくつかのお話も浮かんではいたのですが、どうにも一つにまとめきれず、皆様のお力を拝借した次第です(^^ゞ
 投票項目は順次、前の項目で決定したものから派生させていったのですが、まず最初の「起」で話の方向性が決まったといっても過言ではありません。ここで《シャンディア》が選ばれなかったら、まったく違ったお話になっていたと思います。
 「結」では希望が垣間見える項目に票が集まりましたが、あまりにも都合のいいハッピーエンドにはしたくなくて、あのようなエンディングに着地しました。
 本編の執筆はライブ感覚を出したくて、各章ごとに書き上がり次第ブログアップを行っていたのですが、遅筆が災いして全然ライブ感覚になりませんでした……orz 結局、16周年(2015年)中に終わらず、2016年末になってようやく完結に漕ぎつけるという体たらくですが、とにかく終わらせられたことにホッとしております。
 リダ達の時代から、恐らくはラウル達の時代まで、彷徨い続ける《蜃気楼都市》。在りし日の悲劇を繰り返す彼らに、救いの手が差し伸べられる日は来るのでしょうか。











etude20: 酒
etude20: 酒

この世界では15歳で成人扱いなので、ギルもようやくおおっぴらに酒が飲める年になったわけですが、ご覧の通りあまり強くない模様(^^ゞ
 折角の成人祝いを酒を飲む口実にされたギルですが、絡み酒で思わぬ報復が出来てメデタシめでたし(笑) ま、とんでもないカウンターパンチ喰らいましたが(^^ゞ でもほぼ相打ちなので、やっぱりメデタシ、かしら。












etude21: 遠い約束
etude21: 遠い約束

 Shining k-nightsより、月面都市《LUNA-01》の創設者である竹之内剛造氏のモノローグでございました。
 月をそっくり買取り、そこに学園都市を作る。あまりにも壮大な計画の発端は、孫娘のおねだり――。この設定、もともとは小林一茶の「名月を取ってくれろと泣く子かな」からヒントを得たもので、ほとんど冗談半分に設定したものだったんですが(^^ゞ 今や物語の中核となっております。
 この「遠い約束」を読んだだけでは何のことやらさっぱり、だと思われますが(^^ゞ 話が進んだのち、もう一度こちらを読んでいただくと、また違った味わいが楽しめるかと。 ど、どうぞ気長にお付き合いくださいませ……











etude22: 告白
etude22: 告白

 物心つくかつかないかの頃に、街の片隅に置き去りにされた子供。生きることに必死で、恨んだりする暇などなく。ただ時折夢に出てくる母に、かける言葉が見つからなくて……。
 根っからのお人よしというか……どこまでも優しい子なんだなあ、としみじみ思いました(^^ゞ
 いつか、幸せになれるといい……ね? (なぜ疑問形)

 ……ちなみに、タイトルの「snow flake」はそのまま「雪片」の意味ですが、花のスノーフレークにもかけてあります。花言葉は「慈愛・純粋・汚れなき心」などなど。











etude23: 鏡
etude23: 鏡

 鏡に閉じ込められたお姫様、という構図は、ドラゴンクエスト6に織り込まれていたエピソードから想起したものです。うろ覚えで恐縮なのですが、魔術士の求愛を拒否した美しい姫が鏡に閉じ込められてしまい、という話だったと……。
 あのエピソードと「カガミヒメ」という響きがとても印象的で、このお題を考えついた瞬間にこの話で行こう、と思いました。
 実はこの伝説の真実は二通り考えてあって、没にしたものは「政略結婚を迫られた姫が、魔術士に頼んで自分を鏡に封じてもらい、恋人にしか封印が解けないようにしてもらう」というものでした。しかし恋人は現れず、いつしか鏡は誰からも省みられなくなって、歪められた伝説のみが一人歩きする。やがて数百年の時が過ぎ、その恋人の子孫が偶然リダたちと城にやってきて、鏡の封印を解く、といった具合だったんですが、そんな偶然あるかーい(>_<) と没にしました。
 制御できぬ魔物を召喚してしまった姫の罪、娘を殺さないでくれと願った領主の親心。そして恐らくは、まだ年若い姫を不憫に思い、彼女を鏡に封じたリファ。そして長い歳月を経て残ったのは、誰一人幸せになれない御伽噺。
 そんな悲しいお話を豪快に打ち砕いたリダとギル。それでも、後味の悪さが残るのは否めません。誰が悪で誰が善だったのか。そも、善とは、そして悪とは何か――。
 今回の一件で、物事には多面性があることを改めて思い知らされたギル。しかし頭では分かっていても、認めたくないものがあるようで……。少年の苦悩はまだまだ続きます(^^ゞ











etude24: 架空の構図
etude24: 架空の構図

 夢って、物凄く不条理で不可思議ですよね。例えば私の見る夢など、小学校の時の友達と大学の時の友達が、お互い当時の姿で和気藹々と喋ってたかと思えば、図書館の窓からジェットコースターに乗れたり、何故か日本語が喋れなくなってて、つたない英語で家族と会話していたりと、もうハチャメチャもいいところ。
 そんな不条理さを描いてみたくって、色々試行錯誤したらこうなりました。
 初稿はこの五倍近くあったのですが、よりわかりやすく、と色々削っていったら、いつの間にやらこのような形に。
 ちなみに、ラウルが養父を「父さん」と呼んだのは、これが初めてだったりします。(しかも夢だし)
 思い出せなかった「もう一人」については、おいおい明らかになって……いくのかな?(またかよ)











etude25: 硝子細工
etude25: 硝子細工

 《gilders》初の外伝作品。
 No.18の「結晶」にて登場した「魔法の店」の店主、魔族のジョーカー君。作者のえこひいきにより(笑) 外伝主人公に抜擢です。
 人々の悲痛な叫びに応えた魔術士が彼に命じたのは「王と王妃を何とかしろ」というアバウトな内容でした。それを受けて、わざと壊れやすい硝子細工に変えてから悔い改める時間を与える辺り、彼のひねくれ方も一筋縄ではいきません(^^ゞ
  もっとも、強大な力を持つ彼にとっては、硝子の人形も人間も同じ「脆く儚きもの」なのかもしれません。
  しかし、あのごちゃごちゃした店の中に置かれて九十年も無事でいられたのは、ホントに運がいいとしか言いようがない気が(^^ゞ

 魔法が解けた時、王様とお妃様は何を思うのでしょう。











etude26: 片羽
etude26: 片羽

 「伝説の卵神官シリーズ」はラウル視点で書かれることの多い作品です。それとは違う、エストの村人から見たラウル像が書いてみたくて、このお話を思いつきました。
 トニーさんは「未来の卵」でも登場するエスト村の農夫ですが、実は元冒険者でして、作中でも剣を手に死人と戦っている場面があったりします。エスト村には彼のような人間が数多くいて、しかし普段はそれを表に出すことなく、ただのんびりと暮らしているわけです。
 タイトルになっている「我が善き片羽」という言葉。英語で言う「My Better Half」を訳したもので、そのまま「よき配偶者」というものですね。最初にこの言葉を知ったのは、川原泉さんの漫画「銀色のロマンティック……わはは」だったと思います。なんてステキな邦訳だろうと思って、ずっと心に残っていたので、この作品のタイトルに使わせていただきました。











etude27: 洗濯日和
etude27: 洗濯日和

 青空に翻る洗濯物。わたしにとっては「平和な日常」の象徴ともいうべきイメージなのですが、どういうわけか重苦しい話になってしまいました。
 ようやく判明したギルの父親ダン=ローバーの過去。何も知らされていなかったとはいえ、自分でも色々と思うことがあったギル少年ですが、これで少しはすっきりしたのではないかと。ギルがこれまでの道中で盗賊紛いのことをしてきた(できてしまった)理由も、ようやく明るみになりましたね。洞察力や勘の良さ、手先の器用さは父親譲りのようです。
 とはいえ、まだハッキリしていない部分も勿論あるわけで、まだまだ二人の珍道中は続きます。
 ちなみに、「路地に吊るされた洗濯物」のイメージは多分、映画で見たものだと思うのですが、調べてみたらイタリアのナポリ辺りでよく見られる光景らしいです。












etude28: ハタ迷惑
etude28: ハタ迷惑

 2005年のお年玉企画として募集したオリジナルキャラクター、二人目はアイゲン=エーレントことアイン君です。
 リファの名を騙る男、という設定を見た途端にこの話を思いつきました(笑) ただでさえリファに間違われているリダが、更にその偽者に間違われるという踏んだり蹴ったりな話ですが、普通に二人をぶつけてしまうと面白くないかなと思い、女好きという特性(笑) を利用して一本釣りしてみました。
 ま、アイン君のことですから、あっさり逃げおおせてまた同じことをどこかで繰り返してそうですが(笑) 流石にもうリファの名を騙ることはないんじゃないでしょうか。リファ本人よりもリダからのしっぺ返しが怖いでしょうしね(笑)
 ZAKUROさん、素敵なキャラクターをありがとうございました!











etude29: ひとひらの…
etude29: ひとひらの…

 実はこの題を思いついた時から、このお話を暖めてました。近未来を舞台にしている《Shining k-nights》なら、無理なくクリスマスの話を書けますし。
 西暦2498年の聖夜は、現在のものとさして変わらないようです。あちこちに溢れるイルミネーションとクリスマスキャロル。幸せな時間を共有する人々。そして、コロニーでは本来不可能な「ホワイトクリスマス」までもが、ここに実現しました。
 人工の楽園に降り積もる、幻のような雪。束の間の平和を楽しむ隊員達の様子を書いてみましたが、最後はわざと、意味深な台詞で終わらせてます。
 連載を進めていくうちに、いずれ種明かしを行いますので、どうぞお楽しみに……。











etude30: 流星雨
etude30: 流星雨

 このお題を考えついた時から暖めていたお話の一つ。このエピソードがあるために、《gilders》がいつの時代のお話かがはっきり決まったといっても過言ではありません。世界にまだ魔術士の塔が存在せず、各地の魔術士協会もろくに連携していなかった時代。だからこそリダものびのびと旅をしていた、とも言えますが(笑)
 今まで散々《金の魔術士》と間違われることを嫌がっていた彼女が、それを逆手にとって魔術士達を集める、という今回のお話。リダも辛かったと思いますが、それ以上にギルも辛かったはずです。この危機を乗り越えたことで、二人ともぐっと成長したのではないかな、と思います。
 さて……シリーズ終盤にして、ようやく「あの人」がちゃんと出てきましたが……またすれ違ったぞ(笑)











etude31: 花冠
etude31: 花冠

 エスト村長の息子、マリオを主人公に据えた作品。話が進むにしたがって出番が減っていったマリオ(す、すまんっ)にスポットを当ててみようと、夏祭に彼が幼馴染エリナにアタックした背景を描いてみました。
 ちなみに、マリオの絵の腕前はかなりのものと推測されます。今後、彼がどういう道に歩むのかは定かではありませんが、エリナの尻にひかれるのは間違いなさそうです(^_^;)











etude33: 終焉の時
etude33: 終焉の時

 魔法大国ルーンの崩壊の真相は「未来の卵」で少しだけ語られていますが、あの事件がなくとも、驕れる都はいずれ滅亡したことでしょう。過ぎた力を求めるものはその力に滅ぼされる、それが世の理。そして歴史は繰り返し、同じく魔術至上主義を唱えた東大陸の国もまた滅亡の一途を辿るのですが、それはまた別のお話。
 魔法大国ルーンは一夜にして廃墟となった、と伝説は伝えていますが、実は僅かながらに崩壊する都を脱出して生き延びた者達がおり、彼らは対岸の(といっても大分遠いんですが)中央大陸北部に流れ着いて、そこに暮らし始めます。後にヒーシュテルン王国、そして帝国が大陸統一してからはヒース地方と呼ばれるようになるその地域では、日常生活に魔法が溶け込み、魔法の明かり(照明)や釦を押すだけで火が出る竈(コンロ)、熱風を噴出す筒(ヘアドレイヤー)など便利な魔法道具が庶民の間でも使われています……という設定がどこかにあったはずなんだけど、どこに書いたんだろう、これ……(^_^;)











etude35: 楽園
etude35: 楽園

 こちらは、2012年5月に行われた「COMITIA100」で無料配布しようと企んでいたものの、執筆が間に合わずにお蔵入りしてた作品になります(^^ゞ
 しかし、かなりお気に入りのお話だったので、いつか必ず書き上げてサイトアップしてやる! と地道〜に書き進めること半年以上。ようやく完成の運びとなりました!!

 カエルで一つお話を、と思ったのでカエルが出てくることは確定だったのですが、それをどうやってうちの作品に絡ませるかな〜と考えたところ、「カエル→南国→アイシャ」という発想になりまして(安易ですなあ〜)。
 でも北大陸だと色鮮やかなカエルはいないだろうなあ→南大陸からの荷物に紛れていたことにすれば→いやいや本物が紛れてたら大変だろ→じゃあお守りのカエルで、という流れで、大筋が決まりましたw

 そして、今回珍しく最初に決まったのがタイトルなんです!!
 いつもタイトルに悩んで公開が遅れたりすることもしょっちゅうなのに、今回ばかりはするりと出てきました。
 ただ、最初は「てのひらの密林」にしようと思っていたんですが、ルーン遺跡にある人工の密林を描写しているうちにいつの間にか「楽園」に変わっていました(笑)

 この《楽園》の設定はプロットを練っているうちに自然と出てきたものです。そういうところがあればアイシャも楽なんじゃないかなーと思い立ち、話に盛り込むことにしたら、まあえらい長い話になってしまいました(^_^;)

 ちなみに今回はイメージ楽曲もございまして、「Goddess in the morning」の「Tribute of Jungle」がそれです。執筆中、ずっとこの曲が頭の中に流れていました。
 いつもは気が散ってしまうので執筆中に音楽を流さないのですが、脳内に流れるイメージソングは止めようがなくてw 《楽園》のイメージはこの曲にかなり依存している気がします。機会がございましたら是非聞いてみてください♪