[一言フォーム] [series top] [HOME]
Just the way you are
 アイシャには色々なこだわりがある。それは南大陸の風習だったり一族の掟だったり、はたまた個人的な趣味だったりと実に様々なのだが、それが一人の言動に凝縮されるとなると、相当な異彩を放つ。
 例えば人の名前を極力呼ばないし、普段の発言も極めて端的だ。分厚い外套の下はやたら露出度の高い服装だが、その形や色にも意味があるらしい。
「描かれている紋様にも意味があるそうですよ。ラクダと蛇だったかな」
 椅子に掛けられた外套を横目に、そんなことを言い出したのはカイトだ。
「どれがラクダなんだ?」
 首を捻るエスタスの背後から、にゅっと伸びてきた褐色の腕。なぞるように視線を上げれば、湯上りの体に布を巻いただけ、というとんでもない姿で佇むアイシャが「これ」と紋様の一部を指差していた。
「アイシャ! なんだその格好!」
「着替え、忘れた」
 彼らの定宿『見果てぬ希望亭』の風呂場は一階の奥、そして彼らの部屋は二階の端だ。着替えを取りに行くには食堂を横切らなければならないとはいえ、その格好で平然と出てくる辺りはさすがというべきか。
「駄目ですよアイシャ、そんな格好でうろついちゃ!」
 きょとん、と首を傾げるアイシャに、あたふたと外套を差し出すカイト。そんなやりとりが面白くて、ついついからかいたくなった。
「別にそのままでもいいんじゃないか? 普段と大して変わらないだろ」
「まずいですよ! 動いた拍子に布がずり落ちたらどうするんです!」
 言い合う二人をじっと見ていたアイシャが、おもむろに口を開く。
「――裸を見られた男とは、必ず結婚しなければならない。それが一族の掟」
 ぎょっとする二人に向かって、「見る?」と言わんばかりに布地を引っ張ってみせるアイシャ。
「ままま待ってくださいよ、アイシャ!」
「悪かった! 冗談が過ぎた!」
 青くなったり赤くなったりと大慌ての彼らに、ふと口元を緩ませて。
「――じょーだん」
 え? と目を瞬かせる二人を尻目に、すたすたと食堂を後にするアイシャ。
「おい、どこまでが冗談なんだ?」
「アイシャ―! ちゃんと教えてください!」
おしまい
 第5回 Text-Revolutionsの「第二回キャラクターカタログ企画」に参加させていただいたSSです!
 前回はラウルを出しましたが、今回はどうしようかな、誰かイラスト描いてくれたら参加しようかな~とツイッターで呟いていたところ、KaLさんが名乗りを上げて下さったので、じゃあKaLさんが描きたいキャラでSSを書きます! とご相談させていただいて、アイシャの出番と相成りました。
 先にKaLさんからキャライラストをいただいたので(仕事早いっ!)そこに人物紹介文を入れているうちに、やはりアイシャの特徴である「爆弾発言」をSSに入れたいなと思いまして、こんな内容になりました(笑)

 ちなみに実はこのネタ、元々SS「Happy Bath Day」の番外編として練っていたものの、発表の機会がなくてそのままお蔵入りになったものです。
 その時の被害者(?)はラウルでした(笑)
2017.04.06


[一言フォーム] [series top] [HOME]