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特効薬
 白猫魔法店には今日も様々な客が訪れる。転んでばかりの幼子には傷薬、節々が痛む老婆には湿布と煎じ薬――。
「うちは薬屋じゃないんだよ!」
 ぷりぷり怒りつつもすべての注文に応えてみせるのは、放浪癖のある店主に代わって店を取り仕切る使い魔のペルル。彼女の作る薬は評判が良く、わざわざ遠方から買いに来る者もいるほどだ。
 いっそ薬屋に鞍替えしようか、なんてぼやいたら、数ヶ月ぶりに帰還した店主は「いいわね、それ」と真顔で頷いた。
「冗談だってば。本気にしないでよ」
「分かってる。ペルルがこれ以上忙しくなったら私が困るもの」
 呆れ顔の愛猫を抱き寄せ、艶やかな毛並みに顔を埋める。
「だって、ペルルは私専用の特効薬なんだから」

Twitter300字ss」 第五十回「薬」
 猫は薬(断言)
 こちらは「白猫魔法店」のお話。放浪癖のある魔女ラヴィーナに代わって店を取り仕切るのは、白猫の使い魔ペルル。実は人の姿を取ることも出来るのですが、猫のままでも器用なので不便はないようです。
 ラヴィーナは魔法薬や魔法道具の研究・開発をしており、日頃は材料集めをしたり、新しい術式の研究のために遠方の魔術士を訪ねて行ったりしています。決して遊び歩いているわけでは(げほごほ)
 猫成分が足りなくなると帰ってきて、ペルルを思いっきり撫で回している模様。

2019.02.02


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