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とある時計職人の日課
 最初は、ただ鐘に祈りを捧げるだけだった。
 そこに信仰心などなく、父の慣習をただなぞっていただけだ。
 現実主義者だった父が
『正確な時計を作るために欠かせない日課なのだ』
 と真顔で述べていたのが不思議だったが、何のことはない。
 父は、単に知っていただけなのだ。

「もうちょっと寝かせてくれよー。多少夜明けが遅れたって問題ないだろー」
「仮にも時間の神様が、そんないい加減なこと言わんでくださいよ」
「神様だって眠い時は眠いんだよー!」
「アンタがちゃんと起きないと時計が狂うんだよ! 俺の仕事を台無しにするのはやめろ!」

 時間の神を叩き起こし、街を眠りから覚ます。
 これこそ、時計職人に代々伝わる、極めて重要な使命なのである。


 こちらは裏面のお話。
 実は初期設定では「父の代までは祈りを捧げるだけだったが、最近ではやれ朝食が食べたいだのおやつが欲しいだの、あれこれ要求されるようになって困っている」みたいな話にしようとしてました(笑)
 この後、朝焼けの空を見ながら二人でコーヒーとか飲んでるんじゃないかと思います。

 表面も合わせてお楽しみくださいm(__)m
2018.07.26



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