――お菓子か 悪戯か――
祭の夜、街中に現れる『悪戯妖精』達をもてなすべく、大人達は菓子の調達に忙しい。
「こちらはパン屋さんではありませんでしたか?」
小首を傾げる銀髪の少女に、髭の店主は豪快な笑い声を上げた。
「普段はな。祭の前は菓子屋に鞍替えするのさ」
ちなみに今年の新作はこれだ、と取り出したのは、葉っぱの形をした薄焼きパイ。
ザラメに混じって飾られているのは、色とりどりの金平糖――?
「《極光の魔女》謹製の星粒だ。夜に食べると面白いぞ」
垂れ耳の旦那にも食べさせてやりな、と片目を瞑り、注文のパンを詰め混んだ籠にパイを忍ばせる。
いつも飄々としているあの男がどういう反応をするか、考えるだけで楽しくて仕方がない。