閉店間近に舞い込んだのは、繕い物の依頼だった。
濃緑の布地を贅沢に使った、年代物の祭礼服。
タグを確認するまでもない、間違いなく祖母の仕立てた服だ。
「脇と裾ですね。袖もほつれてるかな」
試着中に破いてしまったのだろうか。持ち込んだ当人は、まるで悪戯がばれた子供のように長身を縮こまらせて、こちらを窺っている。
『晴れの日を彩る特別な装いだもの、最高の一着にしてみせるわ』
几帳面な縫い目から、祖母の声が聞こえてくるようで。
「間に合うかな?」
「間に合わせますよ」
きっと若き日の祖母も、こんなやりとりをしたのだろう。
「ありがとう」
その笑顔につい