ファンタジー小説

ファンタジー作品を集めました!

SS・グルナ大橋

 石橋の上に、そおっと片足を乗せる。 馬車も通るような大きな橋だ、人一人の体重でどうにかなるわけもない。頭では分かっているのだが、生まれ育った環境のせいで、『橋』という存在自体を信用しきれないでいる。「そんなに恐る恐る渡らなくても、この橋は…

SS・あなたのための一杯を ~喫茶『小夜啼鳥』

 書きたい文章がある。綴りたい物語がある。それなのに、いざペンを握った瞬間、何が書きたかったのか分からなくなってしまう。 気分転換でもしてきたら、と友人に紹介されたのは、噂の樹上喫茶店『小夜啼鳥』だった。 夕闇を背に縄梯子をよじ登れば、小さ…

SS・そらとぶゆめ

鳥になった夢を見た。潮風を翼に受けて、空と海の境界線をなぞるように飛ぶ。ああ、このままどこまでも行こう。煌めく波の向こう、海の彼方――誰も辿り着いたことのない世界の果てまでも。根拠のない自信を抱いて翼をはためかせれば、あざ笑うかのように波が…

SS・小夜啼鳥の囁き

 静かな夜だ、と呟く声がいやに響く。そのくらい静かな夜だった。「閑古鳥も鳴かない、と来たもんだ」「代わりに鴎が鳴いてるんだ、帳尻は合ってるってもんさ」 店主の皮肉めいた返答に、ふんと鼻を鳴らす。「常連客は大切にするもんだぞ」「何が常連だ。月…

街案内:一番街

 一番街は《世界樹の街》の中で最も広く、そして最も古い街。旅人が最初に足を踏み入れる街でもあることから、『始まりの街』とも呼ばれています。 《白羊門》と呼ばれる正門は陸路の玄関口。朝から晩まで旅行者や荷馬車が行き交っています。 街は正門広場…

皿の話

「どうもー。《垂れ耳》のおじさん、いるー?」 賑やかな声と共に開いた扉。そこからひょい、と顔を覗かせた同僚の姿に、空いた食器を下げようとしていたオルトは露骨に顔を顰めた。「ジャック。お前、今日は非番だったはずだろ。なんでこんなところにいるん…

百年の刹那

 コンコン コンコン「うっせー……」 夢の中まで響いてきたノックの音に飛び起きたものの、部屋はまだとっぷりと暗く、まだ夜も明けきっていないと悟って溜息を吐く。 独身寮から越してきて一月ひとつき、ようやく一人暮らしにも慣れてきたところにこれだ…

星祭

「《星祭》?」 チラシを手に小首を傾げる銀髪の少女に、《鴎》のオルトは「ああ、そうか」と頬を掻いた。「そういやお前、この街に来て一年も経ってないんだっけか」「私をここに連れてきたのはオルトですよ。もう忘れてしまったのですか」「うっせえ」 『…