SS・最果ての塔
その塔は、世界の果てに聳そびえている。 往ゆきて帰らぬ最果ての島。 すべての思い出が辿り着く場所。 そこは――まさしく世界の果てだった。 果てなき海と終わりなき空、その狭間にぽつんと浮かぶ島。 泡沫の世界群から切り離された、隔絶された時空…
SS ファンタジー小説 垂れ耳エルフと世界樹の街 小説
SS・午睡
「こんにちはー」 たまの休日、友人の顔を見にふらりと骨董店へ立ち寄ったジャックは、やけに静かな店内に小首を傾げた。 鈴を転がすような声で出迎えてくれる可愛い看板娘も、ハタキを振り回す友人の姿も見当たらず、店内はかつて「いつ来ても開店休業中」…
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SS・音楽筐
《記憶の海岸》には、時々不思議なものが流れ着く。 機械仕掛けの翼、壊れた鳥籠、錆びた長剣、書きかけの手紙――。 世界の果てに打ち寄せるのは、記憶の欠片――世界の断片だ。 ほとんどは壊れて使い物にならないが、ごくまれに新品同様のものも流れ着…
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SS・落ち葉掃き
秋も深まってくると、道端が落ち葉で埋もれてくる。 ろくに通行人などいない道であろうとも、店の前が落ち葉だらけなのは見た目が悪いからと、時間を見つけてはせっせと掃き掃除をしている看板娘だったが、掃いても掃いてもまた降り積もる葉に、そろそろ息…
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SS・海へ
「海へ行こうよ」 唐突な言葉に、思わず調理の手が止まる。「急に何を言い出した?」「だって、夏と言えば海でしょ」「まだ夏じゃないぞ」 このところ真夏を思わせる気温が続いているが、本格的な夏の到来は一月以上先だ。「夏の連休の話だよ。たまには夏ら…
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SS・移ろいゆく世界
数多の世界を生み出し、そして壊してきた。 創造神や破壊神と呼ばれたこともあったけれど、私はただの創造者で、そして他よりちょっとだけ長生きな、ただの人間だ。 諸事情で人の理ことわりから外れてしまったから、もはや世界と関わることは許されない。…
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SS・運の尽き
ついてない。本当についてない。 倉庫にあった「変化の壺」を覗いてしまったのが運の尽き。気づけば魔法の杖になっていた。 解除条件は「愛する者からの口づけ」――残念ながら、僕に恋人はいない。 絶望と共に眠り続けること幾星霜。ある日突然、倉庫の…
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SS・星詠みの姫
その占い師は、街外れの楠くすのきに住んでいる。 人一人がようやっと座れるような樹洞にすっぽりと収まって、日がな一日水晶玉を覗いている老婆。その人こそが、かつて『星詠みの姫』と呼ばれたアルベルティーナだ。 そんな気恥ずかしい二つ名も、いっそ…
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SS・せせらぎに金魚
「助けてリリルちゃん!」 勢いよく開かれた扉の向こうから飛んできた、鬼気迫る声。 筒状に巻かれた布を抱きかかえ、骨董店に飛び込んできた女性の姿に、休憩中だった看板娘リリル・マリルは菫色の瞳を大きく見開いた。「ノーマさん? 一体どうしたのです…
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SS・花薫る港
海風に花の香りが混じり出したら、カナン港が近い証だ。 大陸を繋ぐ貿易航路の中継地として賑わう港町カナン。断崖にへばりつくようにして形成された白壁の町並みに、色鮮やかな花々が映える。 ようやく桟橋が見えてきたあたりで、頭上から声が降ってきた…
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SS・朝の作業
朝、配達員達が出勤してまず最初にやることと言えば、本局に集められた郵便物のうち、自分の担当地域に配達する分をより分ける作業だ。 本局二階にある作業室に集まって、予め街区ごとに分けられている郵便物を更に仕分け、配達順に並べ替えて鞄に詰め込ん…
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SS・とびきりの贈り物
ああ困った。本当に困った。 街はにわかに活気づき、あちこちから甘い香りが立ちこめているというのに、私の方針は未だに決まらないまま。このままでは何も用意できないまま当日を迎えてしまう。「まだ悩んでるのかい?」 呆れ顔のルカさんは、先ほどから…
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