SS・楽しいひとときを、君に
店を開くと決めたのは、単に暇だったからだ。いや、これまでもずっと暇だったのだが、これからもずっと暇を持て余すことに一抹の不安を覚えたから、と言った方が正しいか。 しかし、どうやら相談相手を間違えたようだ。貸店舗を探すだけのはずが、気づけば…
SS ファンタジー小説 垂れ耳エルフと世界樹の街 小説
SS・古のまじない
「よお、今日も精が出るな」 いつものように骨董店へ顔を出したオルトは、真っ赤な顔をして縫物に勤しむ看板娘の姿に、思わず顔をしかめた。「お前、暑くないのか?」「魔導人形は暑くても大丈夫なのです!」 そうは言っても、陽炎月だというのに長袖のドレ…
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SS・ライトスタッフ
まったくもってついていない。魔術が暴走して足を怪我したばかりか、愛用の杖まで壊してしまった。 腕の良い魔術士ならば杖がなくとも支障ないのだろうが、いかんせん集中力に欠ける私にとって、補助道具である杖は必需品だ。仕事のためにも新調するしかな…
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SS・新緑の季節
ついこの間まで寒風が吹き荒れていたというのに、気がつけば花の季節が過ぎて、木々は日毎に青さを増していく。 遥か頭上に揺れる世界樹の枝もまた緑に染まり、陽の光を浴びて光り輝くようだ。「いい季節になったねえ」 裏庭に寝転がり、木漏れ日に手を伸…
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SS・mannequin
以前から気になっていたのだ。 時折店の前を通りかかる銀髪の美少女。レースをたっぷり使った白いワンピースにお揃いのボンネット。まるでお人形のような彼女は、ショーウィンドウの新作ドレスを眺めては、幸せそうに溜息をついたり、何やら難しい顔をして…
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SS・錬金術師の弟子
兎にも角にも、彼女はそそっかしくて、とことん不器用だった。 実験機材を壊すのは日常茶飯事。彼女が触れただけで扉は外れ、窓ガラスは枠ごと地に落ちる。 工房内を歩くだけで破壊音と悲鳴を量産する、別名『破壊の錬金術師』。そんな彼女をなぜ弟子に取…
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新春300字SS三連発・犬の話
「おっさーん、手紙――」 扉を開けた瞬間、オルトの目に飛び込んできたのは、長椅子でくつろぐ大型犬の姿だった。 枯草色の毛並み、すんなりとした鼻筋。立ち上がればオルトの背丈など軽く越してしまうだろうその犬は、ひょいと長椅子から飛び降りると、ほ…
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SS・食性
すこぶる偏食なぐうたらエルフは、しかして肉食を厭わない。「動物も植物も、土に還ればみな同じだよ」 そう言って穏やかに笑う店主。「だって、木は『養分』の種類にいちいち文句をつけないでしょ」「それなら、夕飯に貝を出しても問題ないよな」「それと…
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SS・聖者の贈り物
彼女の故郷では、冬至の夜に聖者がやってくるという。 いい子には贈り物。悪い子にはお仕置きを。 贈り物を待ち望む子供達は神妙な面持ちで家の手伝いに精を出す。「この街には、そういった風習はないのですね」 そう呟く少女は、どこか寂しげで。 だっ…
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SS・大人の味
『面白いから食わしてみな』 そう唆されて、食後に出したのが失敗だった。「なんだか、体がふわふわするのです~」 アハハウフフと笑い続ける少女を前にして、どうしたもんかと溜息をつく。「ブランデーケーキ一切れでこれだと、本物のお酒を飲んだらどうな…
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SS・合鍵
「はい」 まるで新聞でも手渡すように、ひょいと差し出されたのは、一本の鍵。「なんだよ、これ」「鍵だけど?」「んなこたぁ分かってら! なんで俺がこの店の鍵を持たなきゃならねえんだ!」 そもそも、この店の扉に鍵などついていただろうか。訝しむオル…
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SS・キノコの森の音楽会
「今夜、『月光キノコの森』で音楽会があるんだ」 そんな話が出たのは、雨に降り込められた午後。「なんだそりゃ?」 情報通の配達人が首を傾げるくらいだから、新入りの看板娘が知る由もない。「まあまあ、騙されたと思ってついて来て」 揃いの雨具に身を…
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