小説

街案内:五番街

 五番街は《世界樹の街》の中で最も細長い街です。魔法街ザナヴェスカの一角、《獅子門》広場から《巨蟹門》広場を繋ぐ《うわばみ通り》一帯のみが五番街と呼ばれ、魔術用品店や魔法薬店、魔法菓子店など、不思議なお店が軒を連ねています。 《うわばみ通り…

SS・ほろほろ ~四番街・菓子屋《銀の匙》~

『食べられる雪が欲しいの。でも冷たいのは嫌よ』 王女の要求はいつだって謎かけのようだ。 ありきたりな氷菓子を出したところで、お気に召すとは思えない。 ならば。「ご所望の『食べられる雪』でございます」 口の中でほろほろと崩れるクッキーは、まる…

SS・巣立ちの夜

 海風に花の香りが混じり出したら、カナン港が近い証だ。 大陸を繋ぐ貿易航路の中継地として賑わう港町カナン。断崖にへばりつくようにして形成された白壁の町並みに、色鮮やかな花々が映える。ようやく桟橋が見えてきたあたりで、頭上から声が降ってきた。…

SS・空を泳ぐ

 雲一つない夏空を映して、海は青く輝く。 煌めく波間から時折見える銀色の背びれを追いかけて飛んでいると、不意に盛大な水飛沫が上がった。「もう疲れたよ~。そろそろ休憩しよ~」 青緑色の髪を振って懇願する幼馴染みに、やれやれと速度を落とす。「沖…

SS・翼の記憶

 翼の記憶、と呼ばれるものがある。 有翼人(エイル)が生まれながらに持つ、自身のものではない『思い出』だ。 遙か昔、ヒトに翼を委ねた鳥達の記憶が刻まれているのだと言われているが、真相は定かではない。 オルトにとっての『記憶』は、煌めく海。 …

SS・空を翔けるもの

 彼らは、空を翔けるために生まれた。 ヒトの体に鳥の翼。総じて小柄な彼らは、見た目よりも更に軽い。 その多くは卓越した飛行能力を生かした職業に就き、その生涯を空と共に過ごす。『我らは風。疾く吹き抜けるもの。我らは空から生まれ、空に還る』 事…

頂き物小説:鷽の鳴き声

「そんな願い事されても困るんだけどなあ…」「あの人のためよ、骨董屋さん」 木彫りの鳥を手にマギーが言う。その時には骨董屋には人形の少女も翼のある配達人もいなかった。マギーが未亡人になったころには二人とも生まれていたかさえ怪しい。その頃の話だ…

頂き物小説:ゴーシュと呼ばれた人

「おっさんはどうしたんだよ」「市場に行きましたよ」 小包みを置くといつもの配達人は広場で開催されているマルシェに顔を出してみた。怪しげな小瓶並べて折りたたみ椅子に腰かけ、垂れ耳エルフの男が転寝していた。「変わらないなあ…もう」 苦笑して彼は…

頂き物イラスト・ユージーン

 烏楽さんにリクエストして描いていただいたユージーンです!! きゃああああああ!!! 実は先日、「10/25はリクエストの日」ということで、烏楽さんのツイッター(@maizeword)で「リクエスト募集」をされていて、そこに、不躾を承知で「…

SS・喧嘩屋ザムザ

「さあさ、売りたい喧嘩、買いたい喧嘩、なんでもござれ! このザムザ様がアンタの代わりに受けてやる!」 威勢の良い口上は、街で噂の喧嘩屋だ。 不敗のザムザと名高い若き喧嘩屋は、金さえ詰めば魔王にだって喧嘩を売る、と評判だ。 悪名高き商人や代官…