小説

皿の話

「どうもー。《垂れ耳》のおじさん、いるー?」 賑やかな声と共に開いた扉。そこからひょい、と顔を覗かせた同僚の姿に、空いた食器を下げようとしていたオルトは露骨に顔を顰めた。「ジャック。お前、今日は非番だったはずだろ。なんでこんなところにいるん…

百年の刹那

 コンコン コンコン「うっせー……」 夢の中まで響いてきたノックの音に飛び起きたものの、部屋はまだとっぷりと暗く、まだ夜も明けきっていないと悟って溜息を吐く。 独身寮から越してきて一月ひとつき、ようやく一人暮らしにも慣れてきたところにこれだ…

星祭

「《星祭》?」 チラシを手に小首を傾げる銀髪の少女に、《鴎》のオルトは「ああ、そうか」と頬を掻いた。「そういやお前、この街に来て一年も経ってないんだっけか」「私をここに連れてきたのはオルトですよ。もう忘れてしまったのですか」「うっせえ」 『…

登場人物紹介

ユージーン・アル・ファルド…《ユージーン骨董店》のぐうたら店主。枯草のような風合いの金髪と深緑の瞳を持つエルフ族の男性。「長身」「美形」「博識」といった一般的なエルフの特徴は備えているものの、細かいことに拘らない性格のためか、常に「いい加減…

コンノさんと今野さん、そして私 ~放課後綺談3~

一、桜並木 夢を見ていた。 不思議な夢だ。 桜並木の向こうで、コンノさんが手を振っている。 何か言っているのに、吹き抜ける風の音がうるさくて聞こえやしない。 舞い踊る桜吹雪。薄紅色に染まる視界。 胸騒ぎがして、咄嗟に手を伸ばす。「コンノさん…

番外編・コンノさんと部室 ―活動限界を探れ!―

 遠くから午後5時を告げる夕焼け小焼けのメロディーが流れてきて、それまで雑談に興じていた部員達が三々五々と散っていく。 漫研の部活動時間は特に定められていないが、大抵は4限終了と共に部室へ集まり、この『夕焼け小焼け』で解散となるのが常だ。「…