tasting
ひょんなことからコンビを組むことになった相棒は、まさに『万能』だ。仕事は言うに及ばず、シャツのアイロン掛けから庭木の手入れまで、何をさせてもそつなくこなす――はずだった。「おい。主に毒見させるってのはどういう了見だ」「毒見とは失礼な。新作…
300字SS ごちゃまぜ書庫 小説
胃世界紀行
――《竜の口》に入っちゃいけねえよ。あの口に入って出てきたもんは一人もおらんでな―― そんな風に教えてくれたのは、どこの誰だったか。 少なくとも、嵐の夜に薪拾いを言いつけた、赤ら顔の村長むらおさでないことだけは確かだ。 他の子は古臭い迷信だ…
ごちゃまぜ書庫 小説
カササギ
連結橋を接続する時は、いつだってドキドキする。 小型宇宙船とコロニーを繋ぐ白い連結橋。ナビゲーターの指示に従って停止し、ゆっくりと伸びてくる武骨な「翼」を、今か今かと待ち構える。『こちらコントロール。《カササギ》の接続を確認。これよりハッ…
300字SS ごちゃまぜ書庫 小説
雲
今日も今日とて雲一つない空。強化ガラスの窓を通して見えるのは、青を通り越して漆黒の『宇宙』だ。「一度でいいから雲を見てみたいなあ」「あんなの、ただの水蒸気だろ」 浪漫を解さぬこいつとは、しばらく顔を合わせたくない。 この狭い移民船の中では…
ごちゃまぜ書庫 小説
天つ風
古びた絵本を閉じ、「おしまい」と結ぶ。 瞳をキラキラさせて耳を傾けていた幼子は、朗読が終わるや否や、こう尋ねてきた。「おばあちゃん、風ってなに?」 ああ、そうだ。第三世代のこの子達は、エアーコンディショナーが吐き出す清浄で単調な空調しか知…
300字SS ごちゃまぜ書庫 小説
刹那の夢 ~HIKARI・Epilogue~
機械は夢を見ない。だからこれは私――館内制御システム《Clio》のメモリに刻まれた、確かな記録。 S.D.121.06.02 17:58pm、展示管理番号A-08より館内ネットワークを通しての呼びかけあり。「コンバンハ クリオ」『こんばん…
300字SS ごちゃまぜ書庫 小説
HIKARI
町の片隅にぽつんと佇む博物館。 その出口近くのガラスケースには、一台のアンドロイドが展示されている。 天鵞絨の椅子に腰かけ、眠るように瞳を閉じたまま、百年以上の長い月日をここで過ごしてきた、機械仕掛けの少年。 他の展示物には詳細な説明のつ…
ごちゃまぜ書庫 小説
〆切天国
登場人物作家:男性(年齢指定なし)天使:主人公を迎えにやってきた天使○病院の一室 一人の作家がベッドに横たわっている。 ベッド脇の小机には書きかけの原稿用紙が置かれている。 己の寿命を悟っている作家は、窓の外を見ながらこれまでの人生を振り返…
ごちゃまぜ書庫 小説
クリムゾンゲート
真っ赤なツンツン頭に青いバンダナ。 茶色の革鎧に身を包み、どこまでもまっすぐな茶色い瞳で。 そいつはいつもこう言うんだ。「行こうぜユート! 冒険の始まりだ」「行こうぜユート! 冒険の始まりだ」 そいつは今日もそう言って、俺の前に現れる。「…
ごちゃまぜ書庫 小説
PRAY ~花に願いを~
山の頂に咲く白い花精霊の宿るその花は花びらの数だけ願いを叶えてくれるという…… もうどのくらい歩いただろう。険しい山道を登りながら、投げかける相手のない問いかけを心の中で繰り返す。 鬱蒼とした森。辺りは昼前にもかかわらず薄暗くて、しかも歩い…
ごちゃまぜ書庫 小説
勿忘草の伝説 ~Vergissmeinnicht~
花を摘んであげましょう 愛しいあなたのために 小さな青い花 水辺に咲く 可憐な青い花を あなたが 微笑むのなら 僕は何も 恐れはしない 青い花を 摘んであげましょう 愛しい あなたのために 揺れる水面 手招く水の乙女たち 若者は 小さな花…
ごちゃまぜ書庫 小説
FIGHT!
きっかけは、ほんの些細なコトバ。 たかだか二文字の言葉に、こんなにも打ちのめされている自分が、情けないやら、悔しいやら。 その場はへらへらと笑ってごまかしたものの、電車に乗って、駅に着いて、コンビニで夕食と飲み物を仕入れて、狭いアパートに…
ごちゃまぜ書庫 小説