垂れ耳エルフと世界樹の街

《世界樹の街》の片隅にある骨董店は本日も気怠く開店休業中――!?

SS・翼の記憶

 翼の記憶、と呼ばれるものがある。 有翼人(エイル)が生まれながらに持つ、自身のものではない『思い出』だ。 遙か昔、ヒトに翼を委ねた鳥達の記憶が刻まれているのだと言われているが、真相は定かではない。 オルトにとっての『記憶』は、煌めく海。 …

SS・空を翔けるもの

 彼らは、空を翔けるために生まれた。 ヒトの体に鳥の翼。総じて小柄な彼らは、見た目よりも更に軽い。 その多くは卓越した飛行能力を生かした職業に就き、その生涯を空と共に過ごす。『我らは風。疾く吹き抜けるもの。我らは空から生まれ、空に還る』 事…

頂き物小説:鷽の鳴き声

「そんな願い事されても困るんだけどなあ…」「あの人のためよ、骨董屋さん」 木彫りの鳥を手にマギーが言う。その時には骨董屋には人形の少女も翼のある配達人もいなかった。マギーが未亡人になったころには二人とも生まれていたかさえ怪しい。その頃の話だ…

頂き物小説:ゴーシュと呼ばれた人

「おっさんはどうしたんだよ」「市場に行きましたよ」 小包みを置くといつもの配達人は広場で開催されているマルシェに顔を出してみた。怪しげな小瓶並べて折りたたみ椅子に腰かけ、垂れ耳エルフの男が転寝していた。「変わらないなあ…もう」 苦笑して彼は…

頂き物イラスト・ユージーン

 烏楽さんにリクエストして描いていただいたユージーンです!! きゃああああああ!!! 実は先日、「10/25はリクエストの日」ということで、烏楽さんのツイッター(@maizeword)で「リクエスト募集」をされていて、そこに、不躾を承知で「…

SS・喧嘩屋ザムザ

「さあさ、売りたい喧嘩、買いたい喧嘩、なんでもござれ! このザムザ様がアンタの代わりに受けてやる!」 威勢の良い口上は、街で噂の喧嘩屋だ。 不敗のザムザと名高い若き喧嘩屋は、金さえ詰めば魔王にだって喧嘩を売る、と評判だ。 悪名高き商人や代官…

SS・薔薇園の主

 《白夜城》の一角、《血まみれ侯爵》が愛する薔薇園には、枯れることのない不思議な薔薇が咲くという。 その薔薇を手に入れた者は永遠の命を手に入れることが出来る。 故に侯爵は何百年もの間、変わらぬ容姿を保ち続けているのだ――「根拠のない与太話を…

SS・裏腹

「誰が吸血鬼か。余は単なる隠居爺である」 剪定鋏を巧みに操り、庭木を整えながら宣う《血まみれ侯爵》。 気位が高そうな風貌とは裏腹に、驚くほど気さくで社交的な彼の趣味は、来客に手料理を振る舞うこと。「庭の薔薇でジャムを作ってみたのだが」「ご相…

SS・からりと

一番街に最近出来た総菜屋の一番人気は「からあげ」。聞き慣れない料理名だが、店主曰く「下味をつけた鶏肉に衣をつけて、からりと揚げるから「からあげ」だよ!」とのことだ。「こっちの世界の人に『唐という国があって』とか言ってもわかんねえもんな」「諸…

SS・深夜の贅沢

 仕事に疲れた日は馴染みの樹上喫茶に寄って、お気に入りの紅茶とケーキを注文する。 夜だけ営業している、隠れ家のようなお店。星屑角灯の淡い光に満たされた店内は、まるで深海にいるようで。 最近導入したという珈琲サイフォンの、こぽこぽという沸騰音…

SS・グルナ大橋

 石橋の上に、そおっと片足を乗せる。 馬車も通るような大きな橋だ、人一人の体重でどうにかなるわけもない。頭では分かっているのだが、生まれ育った環境のせいで、『橋』という存在自体を信用しきれないでいる。「そんなに恐る恐る渡らなくても、この橋は…