SS・移ろいゆく世界
数多の世界を生み出し、そして壊してきた。 創造神や破壊神と呼ばれたこともあったけれど、私はただの創造者で、そして他よりちょっとだけ長生きな、ただの人間だ。 諸事情で人の理ことわりから外れてしまったから、もはや世界と関わることは許されない。…
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SS・運の尽き
ついてない。本当についてない。 倉庫にあった「変化の壺」を覗いてしまったのが運の尽き。気づけば魔法の杖になっていた。 解除条件は「愛する者からの口づけ」――残念ながら、僕に恋人はいない。 絶望と共に眠り続けること幾星霜。ある日突然、倉庫の…
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SS・星詠みの姫
その占い師は、街外れの楠くすのきに住んでいる。 人一人がようやっと座れるような樹洞にすっぽりと収まって、日がな一日水晶玉を覗いている老婆。その人こそが、かつて『星詠みの姫』と呼ばれたアルベルティーナだ。 そんな気恥ずかしい二つ名も、いっそ…
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SS・せせらぎに金魚
「助けてリリルちゃん!」 勢いよく開かれた扉の向こうから飛んできた、鬼気迫る声。 筒状に巻かれた布を抱きかかえ、骨董店に飛び込んできた女性の姿に、休憩中だった看板娘リリル・マリルは菫色の瞳を大きく見開いた。「ノーマさん? 一体どうしたのです…
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SS・花薫る港
海風に花の香りが混じり出したら、カナン港が近い証だ。 大陸を繋ぐ貿易航路の中継地として賑わう港町カナン。断崖にへばりつくようにして形成された白壁の町並みに、色鮮やかな花々が映える。 ようやく桟橋が見えてきたあたりで、頭上から声が降ってきた…
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SS・朝の作業
朝、配達員達が出勤してまず最初にやることと言えば、本局に集められた郵便物のうち、自分の担当地域に配達する分をより分ける作業だ。 本局二階にある作業室に集まって、予め街区ごとに分けられている郵便物を更に仕分け、配達順に並べ替えて鞄に詰め込ん…
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SS・とびきりの贈り物
ああ困った。本当に困った。 街はにわかに活気づき、あちこちから甘い香りが立ちこめているというのに、私の方針は未だに決まらないまま。このままでは何も用意できないまま当日を迎えてしまう。「まだ悩んでるのかい?」 呆れ顔のルカさんは、先ほどから…
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SS・親愛なるお父様へ
親愛なるお父様へ この街にやってきて、随分と経ちました。 お父様へのお手紙も、これで何通目になるでしょうか。 どんなに優秀な配達員でも、この手紙をお父様の元へ届けることはできませんが、こうして思いを綴っていると、まるでお父様とお話ししている…
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SS・冬支度
風に秋の匂いが混じり始めてから、骨董店の看板娘は町外れに住む占い師のところへ通い詰めている。 配達ついでにこっそり覗いてみたところ、どうやら編み物を教わっているらしい。 初心者はまず簡単なものから、という教えなのだろう。余りの毛糸をひたす…
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SS・練習台
カラン、と乾いた音がして、扉が開く。「いらっしゃい、ちょうど新しいのが焼き上がったところだ」焼きたてのパンを棚に並べていた髭面の店主は、やってきた客の姿におやおや、と目を瞬かせた。「今日は随分とめかしこんでるじゃないか」揶揄うつもりはなか…
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SS・渇望
《果ての塔》には何でもある。一生かかっても読み切れないほどの本、南の島の珍しい果実。王侯貴族しか使えない豪華な調度品。欲しいものはすべて揃えた。ここから逃げ出してしまわないように。 ただひとつ、存在しないもの。それは『他人』だ。「わざとだ…
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SS・手紙
町外れの骨董店には、毎日のように手紙や荷物が届く。 先日までは、息をするように居留守を使う店主と、何が何でも受け取らせたい配達員との間で激しい攻防戦が繰り広げられていたが、店番を雇ってからはそんな光景も見られなくなった。「郵便だぞー」 今…
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