SS・錬金術師の弟子
兎にも角にも、彼女はそそっかしくて、とことん不器用だった。 実験機材を壊すのは日常茶飯事。彼女が触れただけで扉は外れ、窓ガラスは枠ごと地に落ちる。 工房内を歩くだけで破壊音と悲鳴を量産する、別名『破壊の錬金術師』。そんな彼女をなぜ弟子に取…
SS ファンタジー小説 垂れ耳エルフと世界樹の街 小説
新春300字SS三連発・犬の話
「おっさーん、手紙――」 扉を開けた瞬間、オルトの目に飛び込んできたのは、長椅子でくつろぐ大型犬の姿だった。 枯草色の毛並み、すんなりとした鼻筋。立ち上がればオルトの背丈など軽く越してしまうだろうその犬は、ひょいと長椅子から飛び降りると、ほ…
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SS・食性
すこぶる偏食なぐうたらエルフは、しかして肉食を厭わない。「動物も植物も、土に還ればみな同じだよ」 そう言って穏やかに笑う店主。「だって、木は『養分』の種類にいちいち文句をつけないでしょ」「それなら、夕飯に貝を出しても問題ないよな」「それと…
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SS・聖者の贈り物
彼女の故郷では、冬至の夜に聖者がやってくるという。 いい子には贈り物。悪い子にはお仕置きを。 贈り物を待ち望む子供達は神妙な面持ちで家の手伝いに精を出す。「この街には、そういった風習はないのですね」 そう呟く少女は、どこか寂しげで。 だっ…
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SS・大人の味
『面白いから食わしてみな』 そう唆されて、食後に出したのが失敗だった。「なんだか、体がふわふわするのです~」 アハハウフフと笑い続ける少女を前にして、どうしたもんかと溜息をつく。「ブランデーケーキ一切れでこれだと、本物のお酒を飲んだらどうな…
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SS・合鍵
「はい」 まるで新聞でも手渡すように、ひょいと差し出されたのは、一本の鍵。「なんだよ、これ」「鍵だけど?」「んなこたぁ分かってら! なんで俺がこの店の鍵を持たなきゃならねえんだ!」 そもそも、この店の扉に鍵などついていただろうか。訝しむオル…
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SS・キノコの森の音楽会
「今夜、『月光キノコの森』で音楽会があるんだ」 そんな話が出たのは、雨に降り込められた午後。「なんだそりゃ?」 情報通の配達人が首を傾げるくらいだから、新入りの看板娘が知る由もない。「まあまあ、騙されたと思ってついて来て」 揃いの雨具に身を…
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SS・百年の刹那・風にとける花
はらはらと舞う薄紅色の花びら。遥か頭上から降り注ぐそれは、地上に降り積もる頃には色と重みを失って、やがて風に攫われて消えていく。 予告なく咲き、風にとける花。百年に一度、数時間しか咲かないという奇跡の花は、散り際まで神秘的だ。「なんだかも…
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SS・百年の刹那・幻の花
百年に一度、世界樹が薄紅色に染まる。 夜明けと共に咲き、小一時間で散ってしまう『幻の花』。『ああ、懐かしい景色だ。故郷を思い出す』 かつてこの光景を共に眺めた異郷の剣士は、そう呟いて涙を零した。 彼が教えてくれた花の名は、もう思い出せない…
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SS・百年の刹那
「おはよー」 夜明け前の来客はあまりにも意外な人物だったから、眠気が一気に吹き飛んだ。「おっさん、なんでここに!?」 黎明の空を背に佇むのは《垂れ耳エルフ》のユージーン。いいから、と問答無用で連れて行かれたのは、彼が営む骨董店の裏――世界樹…
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SS・星粒リーフパイ・燐光
夕食後、紅茶に添えられた小さなパイに、おや、と目を細める店主。「どうしたの、これ」「パン屋さんの新作だそうです」「へえ、美味しそうだね」 意外にも甘いものに目がない店主は、嬉々としてパイに齧りつき――。「ユージーン! 体が光っているのです…
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SS・星粒リーフパイ
――お菓子か 悪戯か―― 祭の夜、街中に現れる『悪戯妖精』達をもてなすべく、大人達は菓子の調達に忙しい。「こちらはパン屋さんではありませんでしたか?」 小首を傾げる銀髪の少女に、髭の店主は豪快な笑い声を上げた。「普段はな。祭の前は菓子屋に…
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