SS

SS・錬金術師の弟子

 兎にも角にも、彼女はそそっかしくて、とことん不器用だった。 実験機材を壊すのは日常茶飯事。彼女が触れただけで扉は外れ、窓ガラスは枠ごと地に落ちる。 工房内を歩くだけで破壊音と悲鳴を量産する、別名『破壊の錬金術師』。そんな彼女をなぜ弟子に取…

SS・食性

 すこぶる偏食なぐうたらエルフは、しかして肉食を厭わない。「動物も植物も、土に還ればみな同じだよ」 そう言って穏やかに笑う店主。「だって、木は『養分』の種類にいちいち文句をつけないでしょ」「それなら、夕飯に貝を出しても問題ないよな」「それと…

SS・聖者の贈り物

 彼女の故郷では、冬至の夜に聖者がやってくるという。 いい子には贈り物。悪い子にはお仕置きを。 贈り物を待ち望む子供達は神妙な面持ちで家の手伝いに精を出す。「この街には、そういった風習はないのですね」 そう呟く少女は、どこか寂しげで。 だっ…

SS・大人の味

『面白いから食わしてみな』 そう唆されて、食後に出したのが失敗だった。「なんだか、体がふわふわするのです~」 アハハウフフと笑い続ける少女を前にして、どうしたもんかと溜息をつく。「ブランデーケーキ一切れでこれだと、本物のお酒を飲んだらどうな…

SS・合鍵

「はい」 まるで新聞でも手渡すように、ひょいと差し出されたのは、一本の鍵。「なんだよ、これ」「鍵だけど?」「んなこたぁ分かってら! なんで俺がこの店の鍵を持たなきゃならねえんだ!」 そもそも、この店の扉に鍵などついていただろうか。訝しむオル…

SS・百年の刹那

「おはよー」 夜明け前の来客はあまりにも意外な人物だったから、眠気が一気に吹き飛んだ。「おっさん、なんでここに!?」 黎明の空を背に佇むのは《垂れ耳エルフ》のユージーン。いいから、と問答無用で連れて行かれたのは、彼が営む骨董店の裏――世界樹…

SS・星粒リーフパイ

 ――お菓子か 悪戯か―― 祭の夜、街中に現れる『悪戯妖精』達をもてなすべく、大人達は菓子の調達に忙しい。「こちらはパン屋さんではありませんでしたか?」 小首を傾げる銀髪の少女に、髭の店主は豪快な笑い声を上げた。「普段はな。祭の前は菓子屋に…