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手紙の木

 オフィス街の外れ、細い路地を何度も曲がってようやっと辿り着くような、そんな辺鄙な場所に、問題の公園はあった。
 背の高い建物に囲まれ、日中でも薄暗い公園。遊具は謎の動物オブジェと砂場のみ。あとは小さなベンチと、そして一本の木。
 四角く切り取られた狭い空に向かって悠然と枝を伸ばすその木には、 一枚のプレートがかけられていた。
「――『手紙の木』?」
 木の種類なのか、それともなにか謂れがあるのか。
 手掛かりを求めて通い詰めるうちに季節は移りゆき――そして秋。
 ひらりと舞い落ちてきた葉っぱを手に取れば、そこには一言。


 ―ネグセ ヒドイヨ―


 葉脈で綴られたその文字に、がっくりと肩を落とす。
「手紙でわざわざ伝えることかよ!?」

おわり


 こちらは「第3回 Text-Revolutions」の有志企画「300字ポストカードラリー」参加作品。
 何故か「手紙」というテーマを見た瞬間、これが出てきちゃったんです(笑)
 ちなみに、「手紙の木」という通称の木は実際に存在します。タラヨウという木で、大きな葉っぱの表面をひっかくと文字が書けるそうですが、この公園にある手紙の木はそれじゃないと思います。

 そして今更気づきましたが、これ301文字あった……あんなに確認して調整したのに……orz
2016.03.22





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