音声までは聞こえないが、笑ったり落ち込んだりと浮き沈みの激しい彼らの表情からして、これまでの冒険を振り返っているのだろう。
「安易なフラグ立てをしおってからに」
呆れ顔で呟きつつも、部屋の主はどこか楽しそうだった。
赤い天鵞絨のマントに長い黒髪を垂らし、純白の肌を包むのは金糸の刺繍を施した漆黒のドレス。額冠には星の輝きを閉じ込めた紅玉が輝いている。いかにも悪役然とした佇まいだが、その表情は意外なほどに柔らかい。
「おっと、いかん。化粧を直さないとな」
魔法の大鏡を使って口紅を引き直していると、背後から遠慮がちな声がかかった。
「
壁際に控えていた秘書の呼びかけに片手を上げて応え、傍らの壁に立てかけてあった杖を掴む。
「よし。行こう」
マントを翻し、颯爽と部屋を後にする。
誰もいなくなった小部屋で静かに輝く水晶球には、休憩を終えて先に進もうとしている四人の姿が映し出されていた。