lost child

[住宅街]

 しばらく歩き続けると、辺りの様子が変わってきた。
 どうやらこの辺りは住宅街のようだ。道端に落ちている大量の花びらからして、輿はすでにこの辺りを通過してしまったのだろう。
 と、背後から小さな足音が聞こえてきた。
 天の助け、と勢い込んで振り返り、次の瞬間がっくりと肩を落とす。
「おかあさーん、おとーさあーん!!」
 ぺたぺたと、頼りない足取りで歩いてきたのは、半ベソをかいた少年だった。年の頃は五、六歳といったところだろうか。
 やばい、と思う間もなく、こちらの姿を認めて飛びついてきた少年に、あーあと盛大な溜息をつく。
「おにいちゃん、ここどこ? おかあさんたち、どこいったの!?」
 人を見つけたことで安心したのか、どっと泣き出す少年。
「俺に聞くな……」

 少年はクリスと名乗った。両親と共に、近くの街から祭り見物に来たという。昨日の夕方にタラントへ着き、今日は朝から祭見物に繰り出していたのだが、昼頃に広場で迷子になって、あちこち探すうちにここへ辿り着いたらしい。
「どうしよう、ぼく、もうおかあさんとおとうさんにあえないのかなあ?」
 再び泣き出しそうになるクリスに、ああもうと呟く。

「一緒に探してやるから泣くな!」 「知るかよ。じゃあな」